ニッケル系ステンレスメーカー 日本冶金工業 【5480・プライム市場】

創業100周年に向け310億円の積極投資 高機能材と生産体制の効率化に注力

日本冶金工業は、戦前の1935年からステンレス鋼の製造を続ける草分け的企業。原料の製錬から製造、加工まで一貫で行う日本唯一のメーカーだ。ステンレス一般材事業と高機能材事業を両輪で展開している。2023年5月に「中期経営計画2023」を策定し、25年度までに高機能材売上高比率50%、総還元性向35%を目指す。
日本冶金工業-久保田 尚志

久保田 尚志(くぼた ひさし)

社長

1955年3月生まれ、大阪府出身。78年、早稲田大学政治経済学部卒業後日本冶金工業に入社。2004年経理部長。08年取締役。10年常務取締役。16年代表取締役専務執行役員、営業本部長。18年執行役員副社長。19年代表取締役社長(現任)。常に自分を客観視する努力を続けることを心掛ける。

鉱石製錬から鋼材化まで自社内製
耐食性・耐熱性に優れた高機能材

ステンレス鋼とは、鉄にクロムを10・5%以上含む合金で、さびにくいという特性を持つ。さらにニッケルを加えると、さびにくい特性がより高くなる。建築、土木、家電機器、産業機器など幅広い分野で使用される。

同社はステンレス鋼の中でもニッケル系に強みを持ち、ステンレス一般材事業と高機能材事業を両輪で展開。ニッケル系ステンレスでは現在約25%の国内シェアがある。

京都・大江山製造所において、原料の一部となるフェロニッケルをニッケル鉱石や廃電池・廃触媒などのリサイクル原料から抽出・製錬。神奈川・川崎製造所においては、溶解精錬、連続鋳造、圧延などを行い、製品に仕上げる。同社のような原料のニッケル製錬からの一貫生産体制を敷く企業は世界でも珍しい。23年3月期の売上高は1993億2400万円(前期比33・8%増)、営業利益292億5600万円(同109・5%増)となった。

ステンレス一般材事業では、ステンレス一般材を製造している。

高機能材事業では、ステンレス鋼よりもニッケルを多く含み、高耐食性、耐熱性、高強度など高い機能性を持つ高ニッケル合金を製造する。海水面での環境下でも100年以上の耐久性を持つ橋脚向けの材料や、耐食性と耐熱性が求められる太陽光発電材料製造プラント向けの材料など、厳しい環境や条件下で使用されるものだ。また次世代エネルギーとして期待を集める水素の製造や運搬、保管にも使用される。

「大江山製造所において長年のニッケル製錬の知見がありますから、ニッケルの扱いに非常に長けています。そして川崎製造所の製造設備は多品種少量生産に適しており、高機能材の製造に必要な高度な技術力も持ち合わせています。高機能材のうち最もニッケル比率が高い純ニッケル材(99%)は、苛性ソーダ製造装置向けや水素製造の水電解の電極材として使用されています。この分野は非常にライバルが少ないのです」(久保田尚志社長)

川崎製造所

▲川崎製造所

大江山製造所

▲大江山製造所

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