売上構成は公共事業約75%23年は過去最高益更新
同社は業界内で唯一、航空機を自社保有・運航する。航空機からの測量技術を基盤に「空間情報コンサルティング」行う。92年には業界唯一の研究所を発足。設備投資と先進技術開発に年間十億円単位で投資しており、技術力に定評がある企業だ。
同社の実力は、災害時の状況把握にも大いに発揮される。調布と八尾に計7機の航空機を保有する同社では、緊急時でも迅速な手配が可能。先日発生した令和6年能登半島地震でも、翌日には空中写真撮影を実施し、同日に被害状況を公開した。
災害時には、撮影の他に航空レーザ計測を行うこともあり、3次元空間データを取得し、赤色立体地図(地形を立体的に可視化できる地図)の作成や、地形や土砂氾濫の蓄積状況、断層のズレ等を災害前後で比較・分析する。こういった技術を活かし、「当社では有事に備えたハザードマップや防災計画の作成、河川や道路等インフラ施設の維持管理、エネルギー事業導入支援、自治体業務をDX化する統合型GIS(地理情報システム)提供など、計測からデータ作成実務に至るまで、総合的な支援を手掛けているのです」(畠山仁社長)。
セグメントは「空間情報コンサルタント」単一。事業別では道路・鉄道・行政支援・エネルギー・復興・DS(Defense & Security)・地籍事業からなる「社会インフラマネジメント事業」が売上高の62・6%を占める。また流域マネジメント・森林・環境事業による「国土保全コンサルタント事業」が26・9%、その他が10・5%。顧客別売上構成は、公共74・6%、民間25・4%。民間も電力・鉄道・高速道路など、インフラ関連が中心であり、公共性は高いが、民間への展開に力を入れ全体の四分の一となっている。23
年9月期は売上高前期比10・8%増の373億400万円で10期連続増収、営業利益は同11・4%増の27億4600万円で5期連続増益且つ過去最高益を更新した。
「データ処理の効率化や作業の自動化など、継続的な生産構造改革により、過去5%程だった営業利益率が直近4年は約7%になりました。
売上高も、デジタル田園都市国家構想や国土強靭化、森林環境譲与税といった国の施策が追い風になり、増収に繋がっています」(同氏)
新中計の肝は新規事業創造10年で次のコア育成目指す
同社では23年10月より、33年9月期に、売上高600億円、営業利益45億円、ROE10%を目標とする「長期ビジョン2033」を始動させた。その第1フェーズとなる「中期経営計画2026」では、26年に売上高450億円以上、営業利益30億円以上、ROE9%以上を目指す。
「これまで以上に新規事業に取り組んでいくため、新規事業創造本部を新設しました。国・自治体から技術力を評価していただき、受注が安定している今だからこそ、新規事業に注力できる時。10年掛けて次のコアを育て、長期ビジョン達成に繋げたい」(同氏)
新規事業は、公共事業だけでなく民間や海外事業にも力を入れる。国・自治体向けサービスはこれまで受託型だったが、新規事業ではサービス提供型・事業運営型事業の創造を目指す。現在、国交省では『地域インフラ群再生戦略マネジメント』(※)の推進を掲げている。同社でも各自治体への包括的対応に取り組む。たとえば複数の自治体の電気代を再生可能エネルギー化して一元管理し、余った予算で公共事業の発注をする仕組み作りや、自治体と協同でSPC(目的会社)を作り効率的に自治体業務を進めるプロジェクトが既に始動。今後の横展開を目指す。
民間向けでは新市場を狙う。同社ではドローンによる設備点検高度化や新規事業創造を目的とする有限責任事業組合「グリッドスカイウェイ」へ航測業界で唯一参画。東京電力パワーグリッドやNTTデータ、日立製作所、中国電力ネットワーク等とともに、ドローンの航路プラットフォーム構築、物流や地域防災への利活用を推進する。また同社では民間向け事業として脱炭素やエネルギー分野にも注力していく。
※地域インフラ群再生戦略マネジメント既存の行政区域に拘らない広域的な視点で、道路、公園、下水道といった複数・多分野のインフラを「群」として捉え、更新や集約・再編、新設も組み合わせた検討により、効率的・効果的にマネジメントし、地域に必要なインフラの機能・性能を維持する考え方。
海外戦略は非ODA強化 スタートアップ投資にも意欲
「新規事業と並行して海外展開やM&Aを進め、ポートフォリオの多様化を目指します。これまで海外事業はODAがベースでしたが、今後非ODAも狙っていく。またM &Aでは、既存事業強化に加え、スタートアップ投資も見極めながら積極的に行っていきたい。計測関連や超小型衛星など、若い企業で新技術がどんどん生まれていますので取り込んでいければ」(同氏)24年9月期は売上高前期比4・5%増の390億円、営業利益同1・2%増の27億8000万円を見通す。国は防衛施設の強靭化で前年度比20%増の6313億円の予算を配分した。防衛・安全保障に不可欠となる同社の航空測量技術への期待は大きい。