ビーズと押出の2事業展開
自動車部材で採用拡大
同社の2024年3月期の連結業績は、売上高1350億5100万円(前期比2・5%増)、営業利益75億6300万円(同155・9%増)。主力は売上の約65%を占める、発泡ポリプロピレンを扱う「ビーズ事業」だ。同社が世界で初めて開発した無架橋ポリプロピレン型内発泡体「ARPRO」は、軽量性、衝撃吸収性、リサイクル性などに優れ、かつ複雑な形状を作るのに適しているため、自動車部材として使われている。燃費効率アップを目的にした軽量化やEV需要にも対応し、国内外のほぼすべての自動車メーカーが採用している。
売上の約31%を占めるのが、主に発泡ポリスチレンや発泡ポリエチレンを扱う「押出事業」だ。食品トレーやカップ麺容器に使われる「スチレンペーパー」や、家電製品・光学機器などを衝撃から保護する包装材「ミラマット」、住宅用断熱材「ミラフォーム」など、幅広い産業用途で使われている。
1962年創業の同社は発泡製品の専業メーカーとして、世界に先駆けて無架橋発泡ポリエチレンシートや、ビーズ法発泡ポリプロピレンの独自製品を事業化した。2000年代にはARPROの自動車部材への採用が拡大し、同製品のグローバルシェアは現在約50%を誇る。
「ポリプロピレン樹脂の性質は強度だけでなく緩衝性があるため、バンパーによく使われました。軽量性もあることから座席の芯材など各部位に用途が広がり、自動車1台に使われる量が増えました。我々は素材メーカーですから、基本的にはティア1やティア2と取引します。一方で、自動車メーカーと性能や機能についての議論は直接行います。開発からデザインまで全て関わり、自動車メーカーが要求する安全試験のシミュレーションも、物になった状態でできるノウハウも蓄積しています。当社の製品は汎用品でありながら汎用化させていないことが一つの特徴です」(大久保知彦社長)
「無架橋」発泡とは
「無架橋」とは、架橋が高分子同士の化学結合を行うのに対し、化学結合を行わない方法のこと。同社の製品は、発泡剤を用いて成形する化学発泡ではなく、物理的な力で膨らませる無架橋発泡のため、複雑さを持たないシンプルな構造となっている。そのため素材としての汎用性が高く、回収・再生しやすいという特徴がある。同社の主力である無架橋ポリプロピレン型内発泡体「ARPRO」は、ほぼ100%リサイクルが可能な素材としても、今後の需要の高まりが期待される。
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