特殊鋼の7割が自動車向け
耐熱鋼と電磁ステンレスに強み
宮城県を地盤とする同社は「特殊鋼」と「不動産」の2分野で事業を展開する。「特殊鋼」とは、鉄と炭素から成る鋼に、ニッケルやクロム、マンガンなどの元素を加えて精製する特殊な鋼を指す。混ぜ込む元素により強度、耐熱性、磁力、柔軟性など用途に合わせた様々な特性を付与できる。売上の約9割を占める特殊鋼事業では、素材の製造だけでなく加工、部品の鋳造、熱処理加工まで顧客の要望に合わせて提供している。
同社の特殊鋼の約7割が自動車の内燃機関向けだ。残りの3割が非自動車で、半導体製造装置や産業機械向けなどになる。自動車向けの特殊鋼の主用途は内燃エンジン用バルブと燃料噴射部品で、いずれも国内シェアトップだ(同社調べ)。
不動産事業では、仙台市内の工場跡地を活用した賃貸業を展開。営業利益は年間11億円ほどで安定的な収益を上げている。
2023年3月期連結業績は、売上高が前期比8・4%増の215億5700万円、営業利益が同36・2%減の12億9700万円となった。電力や副資材の価格高騰が利益に響いた。親会社の大同特殊鋼を経て、東北特殊鋼の社長となった成瀬氏は現状に危惧の念を抱いている。
「今までは自動車向け特殊鋼生産に工場を最適化し、高性能・高品質な製品を作り続けることで業績を伸ばしてきました。しかし、現在の自動車業界はガソリン車からEVへシフトしている。当社で主力のエンジンバルブの需要はすぐには消失しませんが、緩やかに下降していくことは間違いない。私が社長に就任した4年ほど前から、社員には危機感を持ってほしいと伝えてきました。ようやく社内も変わり始めています」(成瀬真司社長)
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