スターツ出版 【7849・スタンダード市場】

紙の本とデジタルの相乗効果で利益拡大
3カ年経営計画目標を初年度で達成

1983年、建設・不動産会社スターツのコミュニティ誌発行をメーンに創立されたスターツ出版。同社は「感動プロデュース企業へ」というビジョンのもと、紙とデジタル両面による書籍発行と、女性向けオンライン予約サービスなどの事業を展開。2022年12月期は過去最高収益を更新し、24年までの3か年経営計画の業績目標を初年度で達成した。快進撃の理由は、従来の出版社とは大きく異なった独自のビジネスモデルにある。同社の菊地修一社長に話を聞いた。
スターツ出版-菊地 修一

菊地 修一(きくち しゅういち)

代表取締役社長

1960年4月生まれ。北海道出身。84年リクルート(現リクルートHD)入社。2001年同住宅情報編集長。03年スターツ出版入社、事業企画部長。04年代表取締役社長(現任)。

投稿サイトから作家を発掘
書籍コンテンツの利益率44.3%

同社は書籍コンテンツ事業とメディアソリューション事業の2つのセグメントで事業を展開している。2022年12月期の売上高は70億2300万円(前期比25・6%増)、営業利益は15億8600万円(同94・6%増)と大きく伸びた。特に営業利益率44・3%と書籍コンテンツ事業の急成長が目覚ましい。またコロナの流行が落ち着き、レストランなどの予約事業を展開するメディアソリューション事業も上向いてきた。

書籍コンテンツ事業では、一般からの投稿サイトを入り口とした独自のビジネスモデルで業績を大幅に伸ばしている。

同社は10代〜20代女子向け「野いちご」、20代〜40代の大人女子、主婦向け「Berry's cafe」、10代〜60の幅広い年齢層の男女を対象とした「ノベマ!」の3つの小説無料投稿サイトを運営。毎月1500以上の投稿の中から優れた作品を発掘し、作家が書いた小説を、最初は紙の書籍として発行する。続いて同じ作品を電子書籍化。さらに6年前からはコミック部門を新設し、人気のある自社の小説作品をコミカライズ(漫画化)して電子書籍化している。そして同じ作品を紙のコミックにして発売。紙とデジタルの循環により、SNSなどによる口コミで読者が大幅に拡大していく “積層型ビジネス”を展開している。
「今から約20年前、他社の携帯小説投稿サイトで評判になった『恋空』などの作品を当社が紙の本にして、250万部を超える大ヒットになりました。そこで投稿サイトを自前で開発し、新たな作品を継続的に発掘することにしたのです。普段は学生や社会人など様々な人達が趣味で投稿していて、なかには非常に面白い文章を書く方もいる。投稿サイトから作家になった人はこれまで500人以上います」(菊地修一社長)

投稿サイトから発掘した作品を小説・コミックの各レーベルから月に2冊から5冊を定期的に出版し、書店に同社のコーナーを確保してきた。読者を細分化し「小中学生向け恋愛小説」「中高生向け恋愛小説」「恋愛ファンタジー」「異世界転生ノベル」など新たな書籍・コミックレーベルを毎年追加。それぞれのターゲットの嗜好を徹底的にリサーチした作品づくりで、レーベルのファンを拡大している。

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