半導体・電子部品商社 レスター 【3156・プライム市場】

積極的なM&A・アライアンスで多様な事業展開
高い技術×情報力で売上高1兆円規模を目指す

レスターは、ソニー特約店の流れを継ぐ商社が経営統合したエレクトロニクスの総合商社だ。M&Aや資本業務提携を重ね、業界トップクラスの売上規模に成長。国内外のデバイス・電子機器などの販売事業を主軸に、EMS(電子機器受託製造)、調達、エネルギー、植物工場などグループシナジーのあるビジネスを展開する。2024年4月、経営資源の最適配分や業務効率化に加え、機動的な事業運営を目的に純粋持株会社から事業会社へ移行。同年5月には中期経営計画を策定した。既存事業の強化と新事業の育成で、27年3月期に売上高8000億円、30年に1兆円規模を目指す。

売上、営業利益が過去最高を更新
多彩な4事業で独自性を築く

レスターは、半導体・電子部品、電子機器などを扱う商社の枠を越え、エレクトロニクス領域の様々な事業を展開する会社だ。2024年3月期の連結売上高は前期比5・2%増の5124億8400万円、営業利益は同10・5%増の159億3000万円で、いずれも過去最高。長期的に業績を見ると、多少の浮き沈みはあるものの基本的に拡大。直近約10年で、売上高はおよそ2倍となった。

事業セグメントは、売上高の92%を稼ぐデバイスBU(ビジネスユニット)と、8%を占めるシステムBUに分かれている(下図参照)。

デバイスBUの主力は、祖業である半導体・電子部品、関連商品などを卸し、販売するデバイス事業だ。グループのグローバルネットワークを通じて仕入れた商品を、国内外の大手自動車部品・カメラ・PC・家電・産業機器メーカーなどに納入。加えて高度なサポート力、技術サービス力によるソリューション提案のほか、LSI(大規模集積回路)設計開発・支援や、信頼性試験受託サービスなども手掛ける。同事業の売上高は、全体の約87%を占める。

デバイスBUのもうひとつの事業は、売上高の5%を担うEMS事業だ。ここでは企画提案・設計から、製造、納入後の品質サポートまで、ワンストップで対応している。韓国株式市場に上場するCUtechが親会社となり、子会社として中国・ベトナムにも工場を展開。韓国大手エレクトロニクスメーカーを主要顧客とし、製造受託サービスを行っている。

デバイスBUで現在取り扱う200種類超の商材ラインナップは、ソニー製品を主力としつつも、市場ニーズから開拓したアメリカ・ヨーロッパ・中国・アジアなどの半導体・高機能電子部品メーカーの商材を幅広く扱う。同BUの仕入先・販売先を合わせた取引先は、国内外7000口座に及ぶという。

一方システムBUは、売上高は大きくないものの、営業利益の3割を稼ぐ高利益体質が魅力だ。こちらは売上高の5%となるシステムソリューション事業、そして同3%のエコソリューション事業の2つで構成される。

システムソリューション事業は、エレクトロニクス商社として培ったノウハウをもとに、最先端の映像・音響、データ処理技術などを使ったソリューションを展開。主な顧客は放送・企業・教育・医療・公共施設やFA(ファクトリーオートメーション)・セキュリティなど。それぞれに最適な機器・システムを企画提案・設計・構築・稼働後のサポートなどを手掛けている。また、アプリケーションの販売・設計・施工・運用・保守メンテナンスなどもワンストップで提供する。

エコソリューション事業は、国内63カ所で182MW(メガワット)の自社太陽光発電所(メガソーラー)を開発・運営するほか、台湾でも94カ所の太陽光発電事業を展開。加えて北海道・東北にて小規模の風力発電・ウィンドファームを運営する(24年12月末時点)。

そのほか、オンサイトPPA(電力購入契約、※1)サービスや、営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)、電力の地産地消などのコンサルティング、完全閉鎖型の植物工場野菜の生産・販売なども行っている。

「15年に、気候変動下での食の安定や地方における雇用創出を目的に植物工場をスタートさせました。現在4工場が稼働しており、グリーンリーフやフリルレタスなどを、1工場で日に1万株ほど収穫しています。提供先はコストコなどのスーパーマーケットやセブンイレブン、ファミリーマートなどのコンビニエンスストアや外食チェーンなど幅広いです」(今野宏晃代表取締役専務)


▲植物工場の様子。グリーンリーフやレタスを育てる

エコソリューション事業の特長は、利益率の高さだ。同事業の売上構成比は3%に過ぎないが、営業利益構成比で見ると全体の27%を占める。同事業が業績の下支えであるとともに、同業他社との差別化にもなっている。

同社は、10年頃の街路灯LED化でのLED納入から始まり、ソーラーパネルやパワーコンディショナーなど、環境商材を調達、提供していた。12年に国のFIT制度(※2)が始まると、自ら発電事業に参画。太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電し、電力小売事業を営むグループのV─Power社にも電力を供給している。

13年に設立された新電力事業者V─Power社は、現在、沖縄を除く全国の官公庁や民間企業などに電力を販売。エネルギーの地産地消などのコンサルティングなども展開する。

デバイスBUの主要市場である半導体市場は、構造的に“シリコンサイクル”と呼ばれる、およそ4年周期の景気変動を繰り返すと言われる。こうした状況で多様な事業ポートフォリオを展開することで、同社はリスク分散を図っている。

「半導体だけであればシリコンサイクルに影響されがちですが、再生可能エネルギーは太陽光をもとにして、安定した利益の基盤を作り出しています。そこに、また半導体事業がピークに入れば更に利益が入る、といったビジネスモデルを構築しています」(二島進専務)

※1:オンサイトPPA:需要家の敷地内に、発電事業者が自らの費用で太陽光発電設備を設置して所有・維持管理しながら、発電した電気を需要家に供給するしくみ
※2:FIT制度:再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を、国が定める固定価格で買い取るよう、電力会社に義務づけた制度。

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