金融業界向けコンサルサポートシステム開発・運用 キャピタル・アセット・プランニング 【3965・スタンダード市場】

相続財産承継システムで銀行・証券売上拡大へ
資産家向けコンサル参入、海外開拓を推進

キャピタル・アセット・プランニングは、金融業界に特化したシステムインテグレーターだ。「FT(金融工学)とITの統合」によって、生命保険会社を中心とした多くの金融機関にDXソリューションを提供している。2024年9月期に過去最高売上高を更新。同年11月には25年9月期から3カ年の新・中期経営計画を発表した。同計画では新規事業として資産家向けの相続・資金運用コンサルティングビジネスへの参入、新プラットフォームの開発、海外市場開拓などを成長戦略に掲げている。
キャピタル・アセット・プランニング-北山 雅一

北山 雅一(きたやま まさいち)

社長

1957年2月生まれ、大阪府出身。79年慶應義塾大学卒業後、監査法人中央会計事務所入所。85年、陽光監査法人(現・EY新日本有限責任監査法人)入所。90年、キャピタル・アセット・プランニング設立、代表取締役社長就任(現任)。公認会計士、税理士資格保有。日本証券アナリスト協会検定会員。

変額年金保険ヒットで生保売上増
銀行証券は計算エンジン使用料増

同社は、金融・会計の専門知識とテクノロジーを融合させ、「システム受託開発」、「クラウド上に開発したシステムのライセンス提供」、「資産管理プラットフォームの提供と相続・事業承継コンサルティング」の3事業を展開。国内半数の生命保険会社(以下:生保)や、銀行、証券会社、FP・金融商品仲介業(以下:IFA)・会計事務所にシステムを提供している。

2024年9月期は、売上高が前期比1・6%増の81億7800万円で過去最高を更新。営業利益は生成AIの研究開発費が膨らみ、同8・4%減の2億9700万円となった。近年、ソニー生命保険や外資系生保各社では、新NISAに対抗した新商品として、変額個人年金保険や変額保険などの資産形成商品がリリースされている。それに伴うシステム受託開発が好調に推移したことにより、同社の生保向け売上は前期比5・7%増と伸長。クライアント別の売上比率は生保84・4%、銀行11・2%、証券会社2・9%、FP・会計事務所1・5%となった。またサービス別売上では、ソニー生命保険や三菱UFJ銀行の相続財産承継システムにCAPライブラリ(金融機関のリテール業務を行うシステムに導入する計算エンジン)が導入されるなど、使用許諾や保守による売上が前期比23%増と好調。サービス別売上構成比は受託開発92・9%、使用許諾・保守は伸長し6・8%、その他0・4%となった。

「相続財産承継システムは主に銀行や証券会社に提供しており、相続税の納税可能性を予想し、事業・財産承継のための各種対策を提案しています。資産運用については、ポートフォリオ理論に基づいてオーダーメイドでユーザーのポートフォリオを分析し提案するシステムです。その計算ロジックであるCAPライブラリは10年程前に完成しており、AIをはじめとした最新技術の導入や法改正への対応など、ブラッシュアップを続けてきました」(北山雅一社長)

同社には税理士・会計士の資格を有する社員が複数在籍しているため、知見・技術において一日の長がある。また相続財産承継システムは、既に確立しているCAPライブラリを活用して各社毎のユーザーインターフェースを整えていくビジネスモデルのため、高い利益率を確保できる。

「人生100年時代、大相続時代という潮流により、銀行、証券会社、生命保険会社のニーズが、当社が得意とするところに傾斜してきていると感じています」(同氏)

25年9月期は、売上高が前期比7・4%増の87億8000万円、営業利益は同51・3%増の4億5000万円を見込む。

同年度には生成AIを活用して開発した保険会社向け文書チェックサービス「LibelliS(リべリス)」(※「生成AI活用した文書チェックサービスに注目集まる」参照)をリリース予定。既に問い合わせが数十社から来ており、売上増が見込まれる。

 

 

生成AI活用した文書チェックサービスに注目集まる

同社では、生成AIを活用した保険会社向け文書チェックサービス「LibelliS(リべリス)」を開発した。同サービスでは、保険募集に関わるパンフレットや広告が法令や規定に則っているかチェックする。保険会社での文書チェックには高度な専門性が求められ、属人化の排除および作業効率の向上が長年の課題となっていた。同社では「リべリス」の使用により作業時間が65%減ると試算している。25年1月にβ版をリリースし、4月から本格的なサービス提供を開始予定。既に多くの生保から問い合わせが殺到している状況だ。順次、損保、銀行、証券会社、不動産会社などへも提供を拡大していく計画である。

初の3カ年中計を発表
営業利益率9%、ROE13%目指す

同社では24年11月に「中期経営計画2025─2027」を発表した。最終年度である27年度に売上高110億円(24年度81億円)、年平均成長率10%(同7・2%)、営業利益10億円(同約3億円)、営業利益率9%(同3・6%)、ROE13%(同5%)を目指す。

同計画では、「顧客基盤深耕・強化」「事業ポートフォリオ改革」「ファミリーオフィスビジネスへの参入」「ストックビジネス向け新プラットフォーム開発」「海外市場開拓」の5つのオーガニック成長戦略と、M&Aによるインオーガニック戦略を掲げている。

「事業ポートフォリオ改革」では、クライアント別での銀行・証券会社・その他の売上割合を27年度に40%(24年度は15・6%)へ、サービス別での使用許諾・保守の売上割合は15%(同6・8%)への引き上げを目標とする(円グラフ参照)。

「当社ではこれまで生保を主要取引先としてきたため、銀行・証券会社は未開拓企業が多く、各社への営業を強化しているところです」(同氏)

同社にとってキラーコンテンツとなるのは『“AIの活用”と“相続のデザイン”』だという。国内では、団塊世代の経営者の世代交代が進んでいる。そのためメガバンクや地方銀行では今後、融資先経営者の事業承継や相続、その後継者による億単位の資産運用が発生すると見込まれる。

「相続財産承継システムでは、資産ポートフォリオの現状、事業の後継者の有無、税制度の利用可否などを生成AIが分析し、同時に相続や資産運用についてパーソナライズした戦略を立てます。今後の銀行・証券会社における重要テーマとなるシステムですので、このシステムの提案でメガバンクを含めた新規顧客獲得を目指していきます」(同氏)


 

新事業として相続コンサル参入
台湾フィンテック企業とも提携

一方「ファミリーオフィスビジネスへの参入」では、新会社としてWealth Engineを設立。IFA・投資助言・投資運用業などを含めた資産家向けの事業承継・財産承継や資産運用コンサルティングを開始する。顧客は経営者や医者などの資産家に加え、新規上場やM&Aにより富を得た若い起業家なども対象となる。

「米国には『パーソナル・ファイナンシャル・スペシャリスト』という公認会計士協会認定の資格があり、資格保有の会計士は税務に加え、ある範囲までの投資一任運用サービスを提供できます。日本では相続手続きまでは会計士の仕事ですが、その後の資産運用に関しては範疇外。そこで当社では自社のシステムを使いながら、税務から資産運用までワンストップで担うサービスを提供します。顧客は、会計事務所を中心に銀行や証券会社からの委託により獲得する計画です」(同氏)

「ストックビジネス向け新プラットフォーム開発」では、24年8月に、台湾のフィンテック(※1)企業、SoftBI社との業務提携を発表した。SoftBI社は台湾・中国において、金融機関へのプライベートバンキングシステム受託売上及び使用料課金におけるトッププレーヤーだ。

「SoftBI社との提携では、日本でまだ普及していないIFA向け資産管理プラットフォームを共同で開発し、使用料課金による安定収入の確保を目指します。開発したシステムは、ファミリーオフィスビジネスでの投資運用コンサルティングにも活用する予定です」(同氏)

「海外市場開拓」では、少子高齢化に伴う日本の生保市場の成長鈍化を踏まえ、平均年齢が若く生保へのニーズ増加が期待される東南アジア市場に、システム開発受託を通じて参入を図る方針。同戦略もSoftBI社と提携し推進していく。SoftBI社がネットワークを持つマレーシアをはじめ、インドネシア、ベトナム、タイを候補地とし、海外市場での生保システムやノウハウの導入、ゆくゆくは銀行や証券会社領域での市場拡大も見据えている。

M&Aによるインオーガニック戦略では、銀行・証券会社向けに既にシステムを提供している企業のM&Aを検討。「事業ポートフォリオ改革」の推進、人材強化に繋げていく。

同社では中計期間中の累進配当を導入した。配当額の維持もしくは増配を基本方針とし、配当性向20~50%程度を目処に利益還元していく方針だ。

※1 フィンテック(FinTech):「Financial(金融)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語。銀行や証券、保険などの金融分野に、IT技術を組み合わせることで生まれた新しいサービスや事業領域などを指す。

 

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