ベステラ 【1433・プライム市場】

独自の特許工法用いたプラント解体工事
市場拡大見越し専門人材獲得を強化

2月20日に設立50周年を迎えたベステラ。同社は設立以来、プラント設備の解体事業を中心に、様々な高付加価値サービスを提供することで成長を遂げてきた。同社は現在、2024年1月期より2026年1月期を最終年度とする中期経営計画「脱炭素アクションプラン2025」を推進。解体業界は、高度経済成長期に建造された設備が老朽化、陳腐化等の理由により解体・更新時期を迎え、今後も解体工事数の増加が期待されている。
ベステラ-本田 豊

本田 豊(ほんだ ゆたか)

社長

1972年5月生まれ、神奈川県出身。96年慶應義塾大学商学部卒、東京急行電鉄(現東急)入社。2009年ベステラ入社、14年取締役。23年代表取締役社長就任(現任)。

トータルマネジメントを展開
24年1月期営業利益V字回復

同社のビジネスモデルは、製鉄・電力・ガス・石油業などの企業から、系列の設備工事会社やゼネコンなどの元請会社に発注のあった案件を、一次下請として受託することが主流。近年は元請け工事の受注に力を入れている。解体の現場では、設計・監督・施工管理・安全管理・行政対応といったプラント解体に関するトータルマネジメントを展開している。

施設でも配管や設備が複雑な解体に強みを持つのが特徴で、高さ100メートル規模の製鉄所の高炉を解体できるのは同社以外にほとんどないといわれている。また、石油精製設備や球形ガスホルダーなど、有害物質が発生する恐れがある設備にも対応する。

同社の強みは、プラント解体工事に関する特許工法を多数有すること。その数は共同出願含め13、出願中は10にも及ぶ。代表的な「リンゴ皮むき工法」は、ガスホルダーや石油タンクなどの球形貯槽の解体時に、くるくるとリンゴの皮を剥くようにして、中心から渦巻き状に切断していくというもの。

「解体時の美しく独自性の高い見た目のみならず、従来の解体に比べ、工期・コスト・安全面においても優れている」(本田豊社長)

他にも、施工用ロボット「りんご☆スター」を活用するロボット工法などを持つ。

同社の事業領域である解体事業に関わる業界は多岐に渡り、その市場規模は合計すると43兆円を超えるという。実際、同社の業界別完成工事高は、石油30%を筆頭に、製鉄29%、電力19%、環境11%と続くように幅広い。

その背景には戦後の高度経済成長とともに歩んできたプラント設備の拡大にある。1960年から建設投資額は右肩上がりで伸長し、1990年代にピークを迎え徐々に下降したものの、2010年以降はまた右肩上がりに転じている。

24年1月期連結業績は、売上高が前期比72・1%増の93億9400万円で過去最高を記録。営業利益も2億4600万円となった。受注残高も電力・製鉄・石油業界での大型工事の受注により、同111・4%増の70億8700万円となった。25年1月期は売上高100億円、営業利益4億2000万円を見込む。


▲「リンゴ皮むき工法」用いた現場

■業界別完成工事高構成比率

属人性排除した体制構築
AI活用した見積書作成

一見、順風満帆に見える同社だが、実は前々年度の23年1月期は売上高54億5800万円に対し、営業利益はマイナス2億1500万円と、上場以来初の赤字を計上していた。営業案件が増加しているにもかかわらず、社内体制が追い付いていなかったことが主因だった。

営業でも工事部門でも数人のスペシャリストに頼ってきた部分が大きく、業務の属人化が起きており、結果、利益が上がらないケースが相次いでいた。同年2月、社長に就任した本田豊氏はこの課題にメスを入れた。

「当時、受注確度がとても高い大型工事の失注があり、その減少分を補うために受注した工事でも赤字が発生しました。これは旧態依然とした社内体制によることが大きいと感じました。そこで属人性をなるべく排除するとともに人材を厚くし、営業と工事部門の体制を整えました」(同氏)

そこで同社はまず、属人性に大きく頼っていた見積作成を排除するために、東京大学発のスタートアップ企業であるEQUESと共同プロジェクトをスタートさせた。

EQUESは文字認識AIの開発や大規模言語モデルを用いた開発などで実績を持つ。これにより見積作成精度の向上と、解体工事の効率化を図ることで、営業案件の増加に伴う事業規模拡大を狙う。

見積書作成にはこれまで多くの時間を費やしていただけでなく、前段階での図面摘出作業にも多くの時間を費やしていた。1万枚ものプラント全体の図面から解体対象の数百枚の図面を見つける作業が必要だったのだ。
一方、優秀な人材を獲得するために手を打った。

「解体業といえば一般的にはイメージは決して良くない。そのため採用のプロをヘッドハンティングしました。それくらい優良な人材の採用に力を入れました。当社は社員数100名ほどですが、人事だけで6名を新たに採用しました。そこから変わってきた」(同氏)

もともと同社の工事部門は5名程度だったが新たに17名を採用、これまで1人1人に負担をかかっていたものを軽減した。

中期経営計画を推進
26年には売上高120億円

同社は24年1月期より、26年1月期を最終年度とする中期経営計画「脱炭素アクションプラン2025」を推進している。26年1月期は売上高120億円、営業利益12億円を目標値に置く。

同社は営業領域拡大のため、西日本エリアを強化。岡山県倉敷市を拠点とするプラントメンテナンス工事・躯体工事会社2社を傘下に収めた。サービス拡充による受注規模の拡大や営業網を強化する。同エリアでは24年1月期に完成工事高が前年比175・2%と大幅に増加した。

解体市場は今後も、社会資本の老朽化、脱炭素化に向けた設備の廃止措置や、2050年のカーボンニュートラル宣言などにより、プラント設備が切り替わる中で、さらなる拡大が見込まれている。そのため、業界動向に大きく左右される同社も環境変化に対応することが求められている。「当社にとっても大きな変革期にある」(同氏)という。


▲風力発電の解体案件も増加

▲高炉解体工事の様子
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