ニッチで勝ち抜く マサル 【1795・スタンダード市場】

気候変動から建物守るシーリング防水トップ企業
新築・改修事業の両輪で事業拡大へ

マサルはシーリング防水、ビル修繕・改修工事を行う専門会社だ。世界有数の多雨国である日本の雨量は年間1700㎖、世界平均(800㎖)の2倍と言われている。近年の気象変動やゲリラ豪雨、大型台風などで水にまつわる災害はますます増加傾向だ。目立たないが、建物を漏水から守る防水シーリングの果たす役割は大きい。シーリング防水技術で日本トップの同社社長に今後の事業展開を聞いた。
マサル-勝又 健

勝又 健(かつまた けん)

社長

1968年11月生まれ、埼玉県出身。91年国学院大学法学部卒業。92年マサル入社。2015年取締役に就任。第1営業部長兼たてもの改装部担当兼経営戦略室長、塩谷商会(現マサルファシリティーズ)取締役などを経て、20年12月、代表取締役社長に就任(現任)。

新国立競技場、スカイツリーなど
超高層ビル都内7割を施工

マサルの社名は、創業者「苅谷勝」に由来する。創業65年の歴史を持ち、新築・既存建物のシーリング防水、ビル改修や修繕工事を手掛けている。シーリングは〝シール=密閉すること〟が語源。建物のタイルやガラスなど部材と部材を特殊ゴムやシリコンでつなぎ合わせて密閉し、水・音・匂いの侵入を防ぐことで建物の資産価値を維持する。

同社はシーリング防水の業界トップランナーだ。日本初の超高層ビル「霞が関ビルディング」を皮切りに「東京都庁」、「六本木ヒルズ」、「新国立競技場」、「東京スカイツリー」など名だたる建造物の防水工事を手掛けてきた。施工実績は、都内の超高層ビルの約7割に上るという。また、技術力を買われ「国会議事堂」、「東京駅丸の内駅舎」、「ニコライ堂」などの重要文化財の復元工事にも携わってきた。技術スタッフは800名、特許件数は24件だ。

同社事業は新築事業と改修事業で、売上比率は約5:5で構成されている。新築事業は超高層のオフィスビル、ホテルやタワーマンションを手掛ける。スーパーゼネコンや大手デベロッパーから特命で受注し、防水工事の工法提案や施工を行う。高品質の施工によりリピート率は極めて高いという。

改修事業では、経年劣化する建物の修繕だけでなく、機能の向上や長寿命化にも取り組む。顧客はゼネコンだけでなく、大手デベロッパーや不動産リート、管理会社、個人オーナーなど多岐にわたり、近年はこの改修事業の裾野が広がっていると勝又健社長は語る。

「改修事業は、新築で私たちが携わった建物のリニューアルからスタートしました。はじめは防水のみの受注でしたが、お客さまからご要望を受け内装工事や空調工事など、協力会社とチームで取り組むようになりました。当社が専門工事会社を束ね、高度な技術によりワンストップで対応できる体制づくりを進めております。将来的には〝総合専門工事会社〟へ進化していきたい」(勝又健社長)

2021年9月期は売上高が77億9400万円、営業利益が4億600万円だ。

「新築工事はゼネコンの発注ありきで、年によって業績に大きな波がでてしまいます。その一方、建物は『ゆりかごから墓場まで』用途に応じて機能を変えていく必要があるため、改修工事には安定したニーズがあり、マーケットは拡大しています。当社はお客さまに寄り添った提案を行い、売上を拡大していきます」(同氏)

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