ハウスコム 【3275・スタンダード市場】

新成長戦略で収益構造多層化とストック事業創出へ
事業規模活かし不動産DX投資にも注力

不動産賃貸仲介の大手として年間7万2000件以上の仲介件数を誇るハウスコムが、新成長戦略を発表した。2025年3月期を最終年度とする3カ年計画では、営業利益を11.9億円、ROEを10.9%といずれも過去最高更新となるチャレンジングな目標を打ち出す。目標実現に向けた具体的な施策と今後の展開を社長に聞いた。
ハウスコム-田村 穂

田村 穂(たむら けい)

社長

1965年生まれ、東京都出身。大学在学中に宅建主任者の資格を取得。その後不動産業界での経験を経て、1994年にハウスコム入社。営業スタッフから1年で店長に抜擢される。常務取締役営業本部長を経て、2014年3月社長に就任。経営修士(MBA)中央大学大学院戦略経営研究科修了(榊原清則ゼミ)。 2016年度、中央大学商学部客員講師に。18年4月、代表取締役社長執行役員(現任)。

転居需要は緩やかに回復
都市部志向回帰の兆し

大東建託の子会社として不動産賃貸仲介業からスタートしたハウスコムは、現在は賃貸仲介関連サービス、リフォーム事業など業域を拡大している。セグメント別売上比率は不動産賃貸仲介事業が約9割、施工関連事業が約1割となっている。主力の不動産賃貸仲介事業は年間仲介件数が7万2000件以上と業界大手の一角を占め、取り扱い物件数と集客力はトップクラスと評価されている。大東建託の物件は18%程度で、8割以上は地域の不動産会社や自主管理家主、大手管理会社の物件を対象としており、地場で太いパイプを築いている。

2022年3月期が最終年度となる前回中計を振り返ると、営業収益は142・1億円の計画に対し146・3億円の上振れで着地する見通しだ。一方、当期純利益は9・7億円の計画より下振れ4・8億円と予想。これは、店舗数は計画を前倒して実現しているもののコロナウイルスの感染拡大により地域別・期間別で賃貸物件への問い合わせにかつてない波があったことが影響した。特に、店舗数の全体の41%を占める東京都と愛知県で転居需要が低下。当該地域での飲食店、サービス業の人口流入が減少したことに加え、外国人の新規契約件数減で全体の契約件数が落ちたことが要因となった。同社のコア収益が粗利率の高い手数料ビジネスであり、契約件数減少が利益低下に直結した。

一方で、製造業が好調だった北関東では契約件数が好調に推移したという。

「転居需要は緩やかに戻っています。転勤など、企業がここ2年人材の移動を我慢してきたことも、そろそろ限界のようです。以前よりはワクチン普及などでコロナの見通しも立ってきたこともあり、人が動き始めている。学生も、一時は東京には出ないという風潮がありましたが、再び都市部志向が戻ってきています」(田村穂社長)

需要が回復傾向にある中で、大手のスケールメリットを生かし不動産テックへのシステム投資も本格化させている。賃貸不動産業界においてシステム活用の重要性は増しており、システム投資が競争力に繋がりやすい。オンライン内見、契約の電子化など契約工程の削減で効率化を図る。

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