オフィス空間ソリューションを提供 イトーキ 【7972・プライム市場】

外資IT出身の新社長のもと事業構造改革
ソリューションビジネスで収益性大幅伸長

オフィス家具の老舗として知られるイトーキは近年、ビジネスモデルに大きな変革が起きている。同社では「テクノロジー×デザイン」を戦略の柱に事業を再定義し、社員の生産性を高めるオフィス空間のソリューションビジネスに注力。家具販売の売り切り型ビジネスモデルからの脱却により、利益率が劇的に改善した。2023年度の営業利益は前期比86%増と大幅に伸長。数年かけて変化の種を蒔き続けてきた同社だが、22年に元・日本オラクル副社長の湊氏が新社長に就任したことにより、種が次々と発芽している。
イトーキ-湊 宏司

湊 宏司(みなと こうじ)

社長

1970年生まれ、大阪出身。東京大学経済学部卒業、南カリフォルニア大学経営大学院修了(MBA)。1994年NTT入社。2008年サン・マイクロシステムズサポートサービス事業オペレーション本部長就任、同社の経営統合により10年日本オラクルカスタマーサポート統括システムサポート本部アカウントマネジメント本部長、19年同社取締役執行役副社長最高執行責任者(COO)就任。21年イトーキ顧問、22年3月イトーキ代表取締役社長に就任(現任)。

働く価値を高める空間を提供
前期は過去最高業績更新

コロナ禍を経て、オフィスを巡る事業環境は大きく変貌を遂げた。経営者は「オフィスに集うことの必要性」を再認識した一方、在宅勤務に慣れた社員は「出社の必要性」を疑問視するようになった。ポストコロナでは「出社したくなる、社員のモチベーションを高めるオフィス」が社員の定着・採用に直結するようになり、オフィス空間づくりが経営者の重要な関心事になっている。

「当社のミッションステートメントは『明日の「働く」を、デザインする。』です。経営者と『明日の働き方』についてディスカッションし、ただワクワクするだけではなく『生産性を高める』レイアウトを空間デザイナーがデザインし、内装工事も施し、家具をセットインする。そうやって当社ではクライアントの従業員の方々の『働く』価値を高めるための空間、そして新しい『働き方』を提供しています」(湊宏司社長)

同社の事業は3セグメントで構成されるが、売上高の70・9%を占めるのが「ワークプレイス事業」だ。同事業ではオフィス移転・リニューアルのプロジェクトマネジメントや空間デザインを中心に、祖業のオフィス家具や建材商品の製造販売、内装業をトータルで手掛けている。同27・7%の「設備機器・パブリック事業」では、工場や物流施設、図書館・美術館・博物館といった公共施設の空間づくり支援や設備提供を行なう。特殊扉や、生体認証・ICカードによる情報セキュリティシステム、研究施設機器なども扱っている。

2023年12月期は過去最高業績を更新。売上高はオフィスリニューアルやオフィス移転を中心に好調に推移し、前期比7・8%増の1329億円で着地。増収効果及び提供価値向上による利益率の大幅増により、営業利益は同86%増の85億円となった。特に主力のワークプレイス事業では、売上高が859億円(22年度)から942億円(23年度)と9・7%の伸びだったのに対し、営業利益は25億円(22年度)から61億円(23年度)と137・6%の大幅増益を果たしている。

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