WEBマーケティングが主力
祖業の教育活かし海外人材も拡大
Zenkenの創業は1975年。語学教室の展開や学習教材の出版、学生の留学支援など、祖業は教育事業である。2000年にはインターネット普及に着目し、オンラインの学習塾事業やインターネットテレビ電話を使ったパソコン教室のフランチャイズ事業に着手。以降も時流に合わせて業態を変化させ、05年には現在の主力となっているWEBマーケティング事業を開始した。18年にはITと語学教育を組み合わせた、海外IT人材事業をスタートさせた。近年では海外人材事業を介護・宿泊業界に向けても拡大中だ。また不動産事業では新宿駅徒歩5分の好立地にて自社ビル2棟を貸し出しており、安定収益を確保している。
「人口減少が進む日本の経済力を支えるためには、IT・テクノロジーの進化と、海外からの人材登用が必須です。WEBマーケティング事業では、クライアントの営業力を補うべく、専門メディアによる効率的な集客支援をしています。また海外人材事業においては、語学教育や留学支援に長く携わってきた経験を活かし、海外人材への日本語教育及び国内企業への受け入れ支援を行っています」(林 順之亮社長)
24年6月期業績は、売上高が56億2700万円、営業利益は3億4900万円と前期比で減収減益となった。セグメント別の売上構成比は、WEBマーケティングが67・8%、海外人材が23・9%、不動産が8・3%、その他が0・1%。セグメント別利益は、WEBマーケティングが9億600万円、先行投資中の海外事業は1億1100万円の赤字、不動産が3億1900万円、その他100万円で着地した。
「減収は、子会社の売却による連結除外の影響や、WEBマーケティング事業におけるBtoCメディアの公開数・運用メディア減少によるものです。海外人材事業においてはコロナ禍による影響が終わり、過去最高の受注数となりました。減益については、事業拡大に向けた人員増強など、先行投資を含んだ数値です。25年6月期に関しては、全セグメントで増収増益を見込んでいます」(同氏)
BtoBメディアに注力
海外人材はインド主軸
WEBマーケティング事業ではニッチな専門メディアの制作・運用により、企業の集客や採用を支援している。扱うメディアは大型ポータルサイト(不動産情報サイトや宿泊予約サイトなど、網羅的に情報を集約したメディア)とは対極のポジションにある。同社ではクライアント企業の商材やサービスに合わせてWEBメディアを制作。例えば「RC住宅」「自動精算機メーカー」「知財戦略コンサル」に特化したメディアなど、市場は小さいが競合も少ないメディアだ。専門メディアでクライアントのターゲットを集め、クライアントを含めたニッチトップ1~3社のみを紹介することでターゲットにクライアントを認知させ、送客へ繋げる仕組みである。同事業はメディア制作費に加え、月々の運用費をストック収入として積み上げていくビジネスモデルだ。
「当社では20年に亘り、累計8000ものメディアの制作・運用をしてきました。SEOやコンバージョン対策に強みを持つ社内ディレクター155名、ライター1314名という布陣が強みです。以前まではBtoCメディアをメインに扱ってきましたが、コロナ禍を契機にBtoBメディアへ注力するようになりました。BtoB企業は自社ホームページと展示会によるPRがメインで、ネットマーケティングに本格参入していない所が多く、コロナ禍には展示会での営業ができずにお困りでいる場合が多かったのです。そういったお客様へ新たな営業施策として、専門メディアによる集客を提案し始め、現在ではBtoB企業での導入数が安定的に拡大しています。運用メディアにおけるBtoBの割合は23年度には56%となりました。BtoCメディアがメインだった頃はメディアの平均継続期間は36・0カ月でしたが、BtoBに注力することで43・4カ月まで伸ばすことができました」(同氏)
海外人材事業では、IT・介護・宿泊業界へ、主にインドやインドネシアから人材の受け入れ支援を行っている。同社では世界有数のIT国家であるインド・ベンガルールの上位大学51校と連携し、学生への日本語教育やビジネスマナー・異文化理解研修の実施、企業への紹介、入社後のフォローまできめ細やかな支援を提供。人材受け入れ先の国内企業からは成約時の人材紹介費に加え、イベント開催・日本語教育・採用後のサポートに関する費用を受け取る。
「インドでは人材の供給過多により、国内では専門性を活かした就職を行えない学生が溢れており、国を挙げて海外での就職斡旋に取り組んでいます。人材事業は母集団形成と人材の質が肝になります。当社はインドでは政府系機関や工科大学、インドネシアでも介護人材送出において伝統のある機関と提携しています。ITエンジニアをはじめ、看護大学卒業者の介護業界への紹介、サービス系大学卒業者の宿泊業への紹介など、質の高い人材の安定供給という点において当社は優位性を持っています。また日本企業は専門性だけでなく日本語能力を重視しますので、紹介だけではなく語学教育にも力を注いでいる点でも他社との差別化を図ることができています」(同氏)
■主力事業の特徴
・主力のWEBマーケティング事業では、目的を持ちキーワード検索するユーザーに訴求するWEBの集客メディアを制作・運用
・ニッチな市場で専門性の高いメディアを制作し、コンバージョンの高い見込み客を送客することで大型ポータルサイトと差別化
■主力事業の強み
・大量のライターをフル活用し、2024年6月期は年間245件のメディアを新規公開
・細分化した市場に着目し、情報が不足している多種多様な市場において専門性の高いメディアを多数展開(取り扱い事業は約80業界)
ChatGPT導入で効率化
海外人材は今後の法整備に注目
同社では3カ年の中期成長戦略でも、2事業の更なる拡大を掲げている。
WEBマーケティング事業では、引き続きBtoBの取引先開拓に注力する計画だ。BtoB業種の市場は巨大であり、毎年新製品が生まれることから、同社では開拓余地は大いにあると見ている。また国内に限らず、クライアントが海外進出する際にニッチメディアを海外で展開する越境メディアの需要も拡大している。加えて2024年11月には国内で初めて、ChatGPTエンタープライズの全社導入を発表。メディア生成や営業活動での効率化・収益力向上を進めていく。
海外人材事業では、日本政府が外国人材の活躍推進を掲げている。同社では今後も法整備や助成金の付与などがより進んでいくものと見ている。
「現状、国内における介護分野での海外人材登用はインドネシア、ベトナム、ミャンマーの順に進み、インドからの登用は今まさに拡大を迎える段階です。5年以内に、海外人材事業の売上構成比が5割を超えることを目標に掲げています」(同氏)