シンフォニア テクノロジー 【6507・プライム市場】

半導体搬送技術を、再生医療に転用
30年には新事業の売上構成比10%へ

シンフォニア テクノロジーの事業領域は、主力であり成長事業である半導体のクリーン搬送システム事業のほか、航空宇宙事業、産業インフラ事業など多岐に渡る。ベースはモーター技術。100年以上、徹底して磨き続けるコア技術を新たな需要に転用することで、新事業を確立してきた。近年では再生医療や、物流DX、農業や漁業など食品分野の自動化にも拡大。数十年先を見据え、新領域の事業化に取り組んでいる。

シンフォニア テクノロジーは、コア技術であるモータ技術を様々な市場に展開している。半導体ウェーハ搬送装置では世界トップシェアを獲得。また国内唯一の航空機電源システムメーカーとして航空宇宙・防衛分野で必要不可欠な存在となっている。両事業への注目により、近年では株価・時価総額ともに大きく上昇を果たした。

先進分野における多彩な事業領域は、創業から100年以上にわたりコア技術を磨き、その技術を新たな事業領域に転用し続けてきた結果である。そんな同社が現在、取り組んでいるもののひとつが「再生医療機器」だ。

再生医療製品市場は、2030年には世界で約7兆円、40年には12兆円規模になると予測されている(アーサー・ディ・リトル社調べ)。再生医療では高品質な細胞の大量生産が課題となっているが、現状では培養は手作業である。

同社は、細胞製造の品質管理で著名な株式会社サイト・ファクトCEO、神戸大学特命教授の川真田伸氏と共同で、密閉型の自動細胞培養装置を開発した。装置では培養データを常に監視し、密閉された環境で細胞培養工程を全自動で繰り返すことで、安定した品質での大量生産を実現。開発には、半導体製造装置や搬送システムで培った制御技術、区切られた空間のクリーン度を保つ技術を応用した。24年、学校法人慶應義塾に2台を納品し、また「2024年日経優秀製品・サービス賞」(日本経済新聞社主催)で最優秀賞を受賞した。今後は国内外の製薬会社や研究機関に販売していく。


▲完全閉鎖型の自動細胞培養装置「CellQualia(セルクオリア)
-Intelligent Cell Processing System-」

▲赤い液体は、細胞の生産に必要な栄養液

 
進行中の新事業には、物流DXや、農業・漁業など食品分野の自動化がある。物流では、トラックから倉庫への搬入や、運搬用台車への積み下ろしなど、まだまだ自動化が進んでいない工程も多い。同社が得意とする搬送技術を活かし、ブルーオーシャン分野の開拓を進めている。また食品分野では、大葉を選別し結束する装置など、今後担い手が少なくなっていく作業の自動化にも取り組んでいる。

同社では「2030年度に目指す姿」として、新規事業で売上高200億円(全体での売上構成比10%)を掲げており、31年3月期に再生医療分野で50億円、物流分野で100億円、食品分野で50億円を目指している。

技術開発力で顧客に貢献する「技術オリエンテッド」を標榜する同社では、技術開発と新事業への技術転用、そこで得た技術を更に他の事業に昇華させてきたことで、今がある。数十年先を見据え、今後も開発投資による未来への種蒔きを続けていく。

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