電子書籍取次の国内トップ メディアドゥ 【3678・プライム市場】

出版業界が抱える課題の解決にコミット
代表取締役2名の新体制、業界DXを牽引

メディアドゥは、電子書籍取次の国内トップ企業だ。紙書籍とは違う煩雑な商流の簡素化や最適プラットフォームの提供などにより、市場の伸長を支えてきた。近年はトップのポジションと最先端テクノロジーの強みを生かし、業界の課題解決にコミットする新事業を展開している。同社では2024年5月、代表取締役副社長CFOに苅田明史氏が就任し、創業者である藤田恭嗣社長との代表取締役2名の新経営体制となった。苅田氏に展望を聞いた。
メディアドゥ-苅田 明史

苅田 明史(かんだ ひろし)

代表取締役副社長CFO

1986年1月生まれ。京都大学経済学部経営学科卒業。2008年UBS証券投資銀行本部入社。フロンティア・マネジメントを経て、13年6月にフライヤーを設立。18年フライヤーの株式譲渡先のメディアドゥに入社。経営企画室担当部長、同室長、取締役CSO兼CFOを歴任し、24年5月代表取締役副社長CFOに就任(現任)。

2200社超の出版社と
150社超の電子書店を取次

同社は、電子書籍取次で国内ナンバー1のシェアを持ち、2200社以上の出版社、150社以上の電子書店と取引している。キャンペーン取扱いコンテンツ数は年間210万点以上、流通総額は約1700億円に及ぶ。セグメントは、売上高の92%を占めるメインの電子書籍流通事業と、第2の収益の柱を目指す戦略投資事業に分かれる。

電子書籍流通事業では、出版社と電子書店の間に立ち、作家・著作者と出版社が生み出したコンテンツを電子化し、電子書店やユーザーに届けている。同社は流通のための最適システム開発から、出版社と電子書店間の取引・契約の仲介、電子書店の運用業務の受託、電子書籍データ・書誌情報・売上・販売実績の管理、キャンペーン管理などの多様なサービスを展開している。

戦略投資事業では、電子書籍流通の圧倒的なポジションとテクノロジーを活用し、業界の様々な課題解決につながる4事業を展開している。

インプリント事業では、グループの日本文芸社や小説投稿サイト「エブリスタ」から、小説やマンガの有力な原作を輩出するとともに、相互連携することで、紙・電子・映画化・ドラマ化などのメディアミックスを推進する。

IP・ソリューション事業では、業界の課題解決につながるサービスを提供している。例えば1冊10分で読める本の要約サービス「flier」や、国内自治体・学校・企業向けの電子図書館サービス「OverDrive」、電子書籍音声読み上げによる視覚障害者向け電子図書館サービス「アクセシブルライブラリー」などがある。

FanTop事業では、紙の出版物にアニメ・スポーツなどのエンターテインメントコンテンツや、作家・アーティストを愛するファンが欲するNFT(※)化したデジタルアイテム・音声・映像・電子書籍・オーディオブックなどとして付帯する。読者はデジタルコンテンツの収集・鑑賞の他、同社が開発・運営するマーケットプレイスでの譲渡・売買が可能となる。

国際事業では、グループの米国「Firebrandグループ」が欧米出版社向けに出版データ統合管理・分析を行うERPツールや書籍のWebマーケティングツールを、英国「Supadü」が出版社のECサイト構築ツールを提供し、出版社のDXを支援するSaaS型サービスを展開。またMedia Do Internationalは、国内作品の翻訳と海外電子書店への取次を行う。

こうした戦略投資事業は、現状では利益が出ていない投資フェーズ。しかし、ゆくゆくは電子書籍流通を強化させる事業になるという。

「例えば国際事業は、2016年から米国サンディエゴを拠点に展開しています。国内出版業界においては海外に輸出するコンテンツが少なく、現状、売上高はそんなに大きくありません。しかし、近年出版社・電子書店の海外展開意欲が高まっており、23年12月にNTTドコモ様などと海外向け電子コミック配信サービスの業務提携契約につながったと思います」(苅田明史副社長)

※NFT(Non Fungible Token:非代替性トークン)は、ブロックチェーン技術を基盤とする技術を活用した唯一無二の価値を持つデジタル資産。

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