か性ソーダで国内トップシェア
ケミカルセンターで安定供給実現
事業多角化、前期に部門再構築
ソーダニッカは、化学品や機能材を扱う専門商社である。トレーディングが中心だが、近年では「化学・機能製品に関する商品からサービスまでのあらゆる機能を備え、顧客と社会が抱える課題の解決に貢献する企業」を目指し、事業を多角化。2023年度から開始した中期経営計画「Go forward STAGE3」より事業構成を「基盤事業」「パッケージ・新素材事業」「生活ソリューション事業」の3事業に再構築した。
「基盤事業」では、化学品と機能材を扱っている。無機・有機薬品、石油化学製品などの化学品は、化学工業、製紙、半導体・エレクトロニクス、日用品・化粧品、工事現場、浄水場など、多くの産業を支えている。その中でも最も基礎的なアルカリ物質である「か性ソーダ」のシェアは国内トップクラスの約15%。同社は国内全ての電解メーカーと取引がある唯一の商社であり、安定した収益基盤となっている。また同社では国内に4カ所のケミカルセンターを配備。ケミカルセンターは化学品を保管・管理する専用施設であり、在庫管理、濃度調整、小分けなどにより、効率的かつ安定した供給が可能だ。機能材に関しては、合成樹脂、電子材料、環境関連製品、新エネルギー関連製品などを扱っている。

▲液体か性ソーダ貯槽
「パッケージ・新素材事業」では、食品等のパッケージ及びプラスチック代替素材を扱っており、炭素を使わない新素材開発にも注力している。卸売にとどまらず、加工機能も持ち、顧客需要に合った製品の企画・開発・製造まで行う。
新事業である「生活ソリューション事業」では、日用品・化粧品の製造受託(OEM)が順調に拡大しており、今後は健康食品やペット用品への展開も計画している。
24年3月期の売上高は前期比2・2%増の641億3400万円、営業利益は同27・1%増の22億1300万円で、利益面は過去最高を更新した。
戦後から歩み進め、創業78年
「コーディネート」で価値を提供
顧客数は3500社以上
同社の創業は1947年。戦前に誕生したソーダ製品の販売統制会社が解散し、3社の販売会社となった。そのうちの2社が79年に合併し、現在のソーダニッカとなる。創業当初は重工業や繊維、製紙などの顧客が中心だったが、半導体・エレクトロニクスや紙オムツなどの新たな需要を発掘し、顧客層や取り扱い品目を拡大してきた。現在では産業界大手を中心とした3500社以上の顧客、5000品目以上の幅広い取扱品目が、同社の経営基盤となっている。
世の中が変容していく中で、同社では供給責任を果たすだけではなく、「いかに顧客需要に適した品目をコーディネートできるか」という「価値の提供」に重きを置くようになった。
「当社でいう『コーディネート』とは、専門知識を活かした一歩先のサービス及び解決策の提案や、顧客基盤を活かし別の業界同士を繋ぐことを指します。利益を生み出す源泉となるのが、『コーディネート』であり、それこそが当社の存在価値なのです」(目﨑龍二社長)
目﨑社長自身が営業担当として製紙業界を受け持っていた時も、多数の商品を扱い顧客に提案していたという。
「お客様の需要により適した商品があるのではないかと思い、変更を提案したところ、価値を感じていただけました。それが結果として利益率を上げることにつながったという経験があります。当社には安定した顧客基盤がありますが、それに甘んじて新しい価値を提供できなければ、売上・利益ともに上がることはありません。営業担当者は常にお客様の課題や社会課題と向き合って提案を考え、新規案件・顧客の獲得を目指しています」(同氏)
時代に合わせた提案で付加価値を
また、近年各企業で意識が高まっている環境負荷低減にも、同社では以前から取り組んできた。例えば、工場からの排ガス対策として、か性ソーダを販売している。黒煙をか性ソーダに化学反応させることで、煙突から排出されるのは蒸気だけとなり、有害物質は除去される。同社ではか性ソーダに限らず、そういった工場用の設備機器の納入・仕入れ先でのカスタマイズ製造や、排出された物質の回収・リサイクルなどを行う。営業担当者の着眼次第で、コーディネートの幅はいかようにも広がっていく。またパッケージ・新素材事業においても、営業担当者がグループ会社や仕入先とともに顧客の課題解決に最適な新素材やパッケージを企画・開発提案している。
ソリューションの活用が注目されがちだが、インフラ面のサポートでも強みを発揮してきたという。
「例えばケミカルセンターはサプライ拠点として古くから機能してきました。か性ソーダを電解メーカーから仕入れる際の濃度は48%ですが、お客様の需要に応じて希釈して提供しています。ニーズに対応することが利益につながり、センターの収益力に貢献しています」(同氏)
長期ビジョンを16年から進行
2016年から開始した長期ビジョン「Go forward」策定以降は付加価値を提供する社会課題解決企業への変革を進め、営業スタイルもルート営業から付加価値提供型へと進化。企業の変革に伴い、利益率も徐々に伸長した。化学品事業の営業利益率は、長期ビジョン策定直後の17年3月期の3・2%からコロナ真っただ中の21年3月期まではほぼ横這いで推移していたものの、その後伸長し24年3月期には7・9%まで上昇。機能材事業では同3・1%から同6・7%まで上昇している(※)。
「当社が重視するのは利益です。もともと商社は利益率が低いですが、小さなコーディネートを積み重ねることで、徐々に利益を押し上げてきていると考えています。そこは今後も上げていかなければならない点です」(同氏)
※同社の開示セグメントでは、「基盤事業」と「パッケージ・新素材事業」はセグメント上では「化学品事業」「機能材事業」「その他事業」を横断。「生活ソリューション事業」は「化学品事業」「機能材事業」セグメントに該当する。
基盤整備と成長投資に最大100億円
ケミカルセンター増強で物流貢献
今中計期間は「変革」の時期
同社では現在、23年度から4カ年の中期経営計画「Go forward STAGE3」が進行中だ。同中計期間は「変革」の時期と位置付けられており、同社では基盤整備と成長投資に最大で100億円を設定。広島大野ケミカルセンターの増強に12億円を投資した。
「広島大野ケミカルセンターでは、タンカーで運ばれてきたか性ソーダを貯蔵するタンクの容量を増やしました。遠くの物流基地から多数のタンクローリーで運ぶより、タンカー1隻で需要地の近くまで運び、そこから短い距離を陸送することで物流を効率化。物流2024年問題や環境問題にも貢献しています」(同氏)
倉庫機能拡張を積極推進
同社は今後グループ全体の倉庫機能拡張も検討している。パッケージ・新素材事業では初の生産設備への投資として、グループ会社である日本包装の岡山新本社工場建設に43億円を投資。最新鋭設備を導入し、生産能力を旧工場の3倍に増強した。
「リサイクルのしやすさや、フードロス削減に繋がる機能性など、付加価値の高い製品の供給を増やしていく考えです。大型投資による減価償却発生のため、25年3月期は減益を見込みますが、あくまでも先行投資によるものです。新展開への意思の表れと捉えていただけばと思います」(同氏)
今後も設備投資や、M&Aによる地域・取扱品目の両面での補完など、成長投資を進めていく計画だ。
「若手に経営経験チャンスを」
同社では成長の基盤として人“財”戦略も重要視しており、従業員のスキルアップと人財の多様性にフォーカスした取り組みを進めている。
「基盤事業ではゼネラリストを、新事業のパッケージ・新素材と生活ソリューションではスペシャリストを育成していきたいと考えます。今後は若手にグループ会社の経営を任せて経験を積めるようにするなど、体制を更に整えていきたいです」(同氏)