電子楽器の国内最大手 ローランド 【7944・プライム市場】

他の楽器メーカーと“異なる競争軸”持ち
高利益率の更なる引き上げに挑む

電子楽器を中心に事業を展開するローランドは、売上高では業界首位を独走するヤマハの4分の1程度だが、営業利益率ではヤマハや河合楽器製作所を大きく上回る。財務危機に伴う非上場化(2014年)を経て再上場した20年12月期以降は、それまでと打って変わって高い営業利益率を維持し続けている。コロナ特需と言われた21年12月期には、営業利益率13%台をたたき出したが、その後も11%台を維持。垣間見えるのは、“異質間競争”とも言える独自の経営戦略だ。ゴードン・レイゾン社長に話を聞いた。
ローランド-ゴードン・レイゾン

ゴードン・レイゾン(ゴードン レイゾン)

社長

1965年生まれ、英国出身。英キール大学卒。米ゼロックスの英法人、米フェンダー欧州法人の幹部を歴任し、2013年ローランドU.K.に入社。14年にヨーロッパの販売拠点を統括したローランドヨーロッパグループCEOに就任し、欧州事業の立て直しを図る。20年ローランド取締役を経て、22年3月にCEOに就任(現任)。

海外売上高比率は91%
電子ドラム、エフェクターで首位

ローランドは国内楽器メーカー大手では唯一の、電子楽器を中心に事業を展開するメーカーだ。セグメントは「電子楽器事業」の1つだが、電子ドラムやキーボード、電子管楽器などの電子楽器、またギター用アンプやエフェクター、ビデオミキサーなどの音楽映像機材など、展開する商品は幅広い。製品別売上高比率は電子ピアノなど「鍵盤楽器」が27%、電子ドラムや電子管楽器などの「管打楽器」が29%、エフェクターやギターアンプなど「ギター関連機器」が25%、シンセサイザーなど「クリエーション関連機器&サービス」が12%(2023年12月期実績)。

米国でのシェアを見ると電子ドラム、ギターエフェクターが1位、電子ピアノ、ギターアンプが2位と、多くの分野で首位を争う。早くから海外での販売に注力し、欧米に加えアジアの新興国での売上も伸びている。海外比率は91%と非常に高い。

同社の23年12月期連結業績は、売上高は前期比6・9%増の1024億4500万円、営業利益は同10・4%増の118億7100万円と増収増益だった。

世界の楽器市場は年平均成長率を長期的に見ると、1~3%の安定成長を続けており、米Music Trades誌によると21年実績で約192億ドル(約3兆円)に達した。コロナ禍の巣ごもり期間には世界中で多くの人が楽器演奏を始め、楽器業界に特需をもたらした。しかし同社において特筆すべきは、コロナ収束後も継続して業績を伸ばしていることだ。

同社はギターアンプやリズムマシンなど、世界中のミュージシャンやクリエイターにずっと愛されるロングセラー製品を提供する一方で、業界初の革新的な製品を次々に生み出している。世界初の電子和太鼓「TAIKO─1」、リコーダーのスキルがあればサックスやオーボエなど多彩な音で演奏できる電子管楽器「エアロフォン」など、ここ数年で大ヒットした製品は数多くある。

「ローランドにはたくさん強みがありますが、一番の強みは顧客、ファン、音楽を愛する全ての人々を商品開発の中心に据えていることです。お客様のwant(欲しい製品)、need(必要としている製品)を最大限に形にする上で、お客様に最良のアイデアを提供する『イノベーション』の精神を大事にしています。我々の技術力を実践的に応用したり、当社の思いを商品にこめて伝えたりすることもイノベーションがあれば可能になります。それが結果的には売上につながり、ステークホルダーや当社、最終的には社会に対しても利益を与えるのです」(ゴードン・レイゾン社長)

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