▲発売60周年を迎えた肉まんとあんまん
「あずきバー」年間3億1500万本販売
和洋を融合した食品を海外でも販売
同社は、あずきをはじめとした和素材を使用した食品を、国内外で製造販売している。グループ10社からなる企業群で、中核となるのは井村屋と井村屋フーズの2社だ。
全体売上の8割を占める井村屋は、一般消費者に向け菓子、食品、デイリーチルド(豆腐など)、冷菓、冷凍和菓子、肉まん・あんまん、フードサービス事業を展開する。代表的なロングセラー商品は「ゆであずき」「あずきバー」などだ。
「当社はもともと羊かんの製造からスタートし、そこからあずき関連の商品へ展開してきた歴史があります。ですので、あずきに関する加工技術は、今でも大きな強みです」(大西安樹社長)
主力商品のあずきバーは、「氷菓」に分類されるアイスの中で毎夏売上トップのブランドだ。全国のスーパーやコンビニで販売されており、24年3月期は年間累計3億1500万本を販売し過去最高となった。
あずきバーは23年に発売50周年を迎え、それをきっかけに原料を見直した。原料の1つであるコーンスターチをあずきパウダーに変更することで、原料を5種から4種へとシンプルにし、クリーンラベル化(※)した。また同シリーズ商品である「あずきバーミルク」「あずきバー抹茶」は、原料のミルクのグレードを上げて北海道産生クリームを使用したり、抹茶を福寿園ブランドに変更したりなどの改良を行った。
※クリーンラベル化:食品パッケージの表示内容が明確でわかりやすいこと、またはその表示の仕方が簡潔であることを望むこと。
同時に、発売当時の味を再現した復刻版も開発。商品リニューアルと共に販促活動も行った結果、大きな成果を上げることができたという。
「あずきバーの拡大は、消費者の嗜好に合わせて甘さや固さを変えてきたことが大きな要因だと思っています。現在はあずきバーミルク、あずきバー抹茶のグレードアップが周知されてきて、採用してもらえる売り場や店舗が増えている。24年度の出荷本数も、前年度より若干拡大しています」(同氏)
24年度は肉まん・あんまんの発売60周年を迎えた。両商品は、冷凍やチルドの形で全国のスーパーで販売されているほか、コンビニ店頭では、スチーマーで温めて販売されている。60周年では包装を見直してトレイをなくすとともに、過去の人気商品をリニューアルした復刻商品「イカスミまん」「プリンまん」を数量限定で発売するなど、限定商品の販売も進めている。
一方、売上の約1割を占める井村屋フーズでは、液体調味料や粉末調味料などの製造販売を行う。例えば食品会社が粉末スープ商品を作る際、同社が製造した野菜の粉末や醤油の粉末などを材料として提供する。
グループの海外事業では、2000年代に入りアメリカ、中国、マレーシアに本格進出。中でもアメリカ事業の売り上げは全体の3・9%を占める。餅とココナッツクリーム、餅とアイスクリームをはじめ、和と洋を融合させた商品の製造・販売や、グループ会社で製造した製品の輸入総代理店事業を展開している。
現社長の大西氏は、16年から18年まで代表取締役社長最高執行責任者(COO)を経験。退任後の19年に子会社の井村屋スタートアッププランニングに出向し代表取締役社長に就任した。マレーシア現地法人立ち上げの中心的な役割も果たした後、23年に再び社長に就任した。現在代表取締役会長(CEO)を務めるのは、中島伸子氏。大西氏の前に井村屋グループの社長を務めていた。現在は、この2代表制で事業を展開している。
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