2023年2月期の連結売上高
5期ぶりに過去最高を更新
4月に発表された2023年2月期の連結決算の売上高は、過去最高となった。ファッション業界では、ファーストリテイリング(9983)、しまむら(8227)に次ぐ売上高だ。
アダストリアはアパレル、雑貨などを扱うブランドを「独立型ブランド」「成長型ブランド」「収益型ブランド」の3つに区分けしている(左上図参照)。
まず「独立型」の主力ブランドは「グローバルワーク」(売上高455億9700万円)、「ニコアンド」(同298億2500万円)、「ローリーズファーム」(同213億6900万円)、「スタディオクリップ」(同203億2500万円)の4つ。それぞれが独自の成長戦略を持って展開している。 次に「成長型」は「ラコレ」や「ベイフロー」など4ブランドと、子会社での事業を展開。新規市場や新カテゴリーを開拓して規模を拡大している。「収益型ブランド」は「ジーナシス」や「レプシィム」など9ブランドを展開し、収益性の向上を図っている。「グローバルワーク」だけでも売上高500億円規模に成長している。「ニコアンド」「ローリーズファーム」「スタディオクリップ」もそれぞれ200億円を超え、主力のグローバルワークを含む「独立型ブランド」4つで売上高は1200億円を超える。「成長型ブランド」の「ラコレ」の売上高は79億3400万円で、前期比63・8%増。
この成長は、雑貨などの商品カテゴリーの拡張と、店舗数拡大などによるものだ。「収益型ブランド」の「ジーナシス」や「レプシィム」もそれぞれ100億円超え。このように「独立型ブランド」の成功で収益を確保し、マルチなブランド展開を実現している。
24年2月期の連結売上高は2600億円(前期比7・2%増)を予想している。販管費は1320億円で、同9・0%増、営業利益は140億円(同21・6%増)予想。売上高の伸びとともに営業利益の大幅な増加を見込む。この伸張の要因はどこにあるのか。 同社は過剰に在庫を抱え込まないよう注力している。販管費は処遇の改善や新規採用の人件費、広告宣伝費で上昇しているものの、結果的に前期比1桁増に抑えられている。また売上総利益率は56・2%を見込む。常に商品単価の見直し、ASEANでの生産の拡大による原価低減、値引きの抑制に取り組む意向だ。
またMD(マーチャンダイジング)は、適時・適価・適量を方針として、現在ではAIを活用した需要予測を行なっている。常に現場に目を光らせており、顧客の動向や販売状況、トレンド情報をスピーディーにキャッチしている。
「会長の福田の下で様々なことを学んできましたが、特に事業コントロールについて厳しく教えられた。ファッション性が抜きんでていても過剰な在庫を抱えて事業継続できなくなるケースもこの業界にはたくさんある。在庫を持ちすぎないよう、いかにコントロールをしていくか、当社はそういう仕組みが非常に強い会社です」(木村治社長)
23年2月期は2桁増収増益だったが、コロナ禍はどうだったのか。
「意思決定の速さという当社の強みが活きたと感じます。緊急事態宣言が発令された直後から福田は即断即決してCFOにはキャッシュの確保を、私には現場で直接の家賃交渉を任せた。結果的にコロナ禍でも他社に先んじて投資ができた」(同氏)
その間にも同社は未来への投資と成長戦略の実行を止めなかった。「ラコレ」の生活雑貨・アパレル雑貨の出店投資や、ウェブストア「ドットエスティ」へのマーケティング投資、eコマースや店舗を支えるシステム投資、物流への投資などだ。「苦しい時ほどチャンスが
ある。結果として今、花開いている」(同氏)
コロナ禍の3年を経て、更に強固な企業に成長し、前期は過去最高の連結売上高を創出するに至った。
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