第一稀元素化学工業 【4082・プライム市場】

ジルコニウム化合物の世界シェア4割
EV・PHV用電池素材の開発進める

6 5年前の創業以来、一貫してジルコニウム化合物の可能性を追求してきたのが大阪の第一稀元素化学工業(4082)だ。電子材料、耐火物、ブレーキ、酸素センサーなどに対し、それぞれに合ったジルコニウム素材を開発。ニッチ分野に特化した強みを生かして事業を展開している。
第一稀元素化学工業-井上 剛

井上 剛(いのうえ つよし)

社長

1960年5月生まれ、大阪府出身。8 6年神戸大学大学院修了後、住友電気工業入社。2000年、第一稀元素化学工業に入社。07年取締役設備部長、10年3月、専務取締役などを経て、同年6月、代表取締役社長に就任。20年代表取締役社長執行役員(現任)。

原料から一貫生産
カスタマイズに強み

第一稀元素化学工業は、無機化合物の製造・販売を行う素材メーカー。主力はジルコニウム化合物だ。

ジルコニウムとは118ある元素のひとつで、レアメタルの一種。熱や腐食に強いほか、化合物になると結晶構造などにより多種多様な機能や特性を発揮する。代表的なのがイオン伝導性だ。酸素イオンを通すこの特性は、同社によればセラミックス素材の中でも極めて珍しいジルコニウム固有の特長。現状では、燃料電池の心臓部である電解質の原料などに活かされている。

同社が創業した1956年当時、ジルコニウムは機能性素材としての認知度は低かった。しかし、原子力発電でウランなどの燃料を収納する筒にジルコニウムが使われていることに着目した創業者が、その可能性に賭ける形で起業。国内に顧客がほぼ皆無だった中、「ジルコニウム一本ということで、なかなか『勇気のある創業』だった」(井上剛社長)というが、以降は業界のトップランナーとして、その機能性の追求と用途開発を行ってきた。

同社の特長は、鉱石、中間原料、一次製品に至るまで、一貫した生産技術を保有している点だ。また、ジルコニウム化合物の粉末を用途に合わせて各分野に供給。顧客の要望に応じた微細なカスタマイズを施し製品化してゆくビジネスモデルで、多品種・少量生産で対応を行う点は大きな強みとなっている。

同社は、小回りを利かせた商品開発などにより多数の企業との取引を積み重ね、今では世界シェア40%(同社推定)となるまでに至ったという。昨年は、経済産業省認定2020年版「グローバルニッチトップ企業100選」にも選定された。

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