約10万点のアイテムを1日5億円分提供
デンソー向け売上は69%を占める
同社は、最先端エレクトロニクス製品に欠かせない半導体をはじめとした電子部品・電子デバイスなどを扱う技術系商社。近年の自動化・電動化に必要な電子デバイスなどの在庫を約10万点揃え、価格にして5億円分の商品・アイテムを毎日安定的に供給している。
日本有数の自動車関連企業が集まる中部圏の立地柄、同業界向けが売上の約89%を占める。加えて社員約700人のうち約300人が技術系という高い技術力で、オリジナル製品を開発・販売するメーカー機能を併せ持つ。
事業セグメントは、「デバイス事業」と「ソリューション事業」に分かれる。
デバイス事業では、価値向上させるカスタマイズやソフトウェアを付加しながら、エレクトロニクス化を支える最先端電子デバイスを提供する。その他、車載液晶パネルやオリジナル評価ボードの供給、自動運転やADAS向けの開発に欠かせない走行データ収集、バーチャル環境開発支援なども手掛けている。
主要顧客は、デンソーグループを中心としたトヨタ系列の部品メーカーで、デンソーの売上は69%を占める。一方、仕入れ先は半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスが約50%となっている。
ソリューション事業では、モビリティや製造現場を持つ工場、社会インフラ、医療・健康といった領域でIT技術などによる課題解決、最適化させる提案型ビジネスを展開する。
ITソリューションでは、IT機器販売、アプリ開発、IoTシステム開発、セキュリティ対策など。組込ソリューションは、産業用コンピュータ開発・製造、機械装置向け組込産業用コンピュータ販売など。FAエンジニアリングは、計測機器・検査装置・FA機器販売、各種自動化・省力化製造装置の開発・製造・販売などをそれぞれ行う。自社開発製品の納入実績は延べ30万台以上に上り、ATMや自動改札などの社会インフラで、同社の産業用コンピュータが採用されている。
また同社は、海外進出も積極的に行っている。1996年のシンガポールを皮切りに、北米・欧州・アジアでグローバルビジネスのネットワークを構築。当初は日系企業の海外現地生産のサポートを主としていたが、近年は現地ビジネスの拡大を図っており、徐々に成果が現れてきている。結果、現在は売上高の約24%を海外が占めている。
「例えばインドでは、タタ・モーターズに代表されるような現地企業で、我々が扱ってる製品がポテンシャル領域に入ってきています。今後、海外で新たな市場開拓を進めていきます」(木村守孝社長)
▲開発・生産、品質検査から販売・サービスまでをすべて国内で行う自社工場を持つ
1960年からトヨタとの取引開始
売上・営業利益は3期連続過去最高
同社は1948年、萩原電気工業社として個人創業。56年に日本電気と販売特約店契約を締結した。59年には電子部品販売の卸部門を新設し、商社事業へと参入。60年には現トヨタ自動車、現デンソーと取引を開始した。65年に電子部品・電子機器販売に加え、自社製品の製造・販売体制を確立した。
2024年3月期の売上高は、前年比21・0%増の2251億5000万円、営業利益は同14・7%増の77億1100万円と、3期連続過去最高を更新した。円安影響や主要供給先の自動車の生産台数増加もあったが、「半導体関係ならば集積度の高いマイコン・SoC※といった高付加価値領域への事業のフォーカスにより、製造台数以上の伸び率がありました」(同氏)という。
※SoC (System on a chip):一つのチップで様々なシステムを実現する高機能半導体製品
セグメント別の売上高をみると、デバイス事業は1961億円で構成比は87%、ソリューション事業は290億円で13%。一方営業利益は、デバイス事業は56億円で74%、ソリューション事業は20億円で26%となった。
「会社のボリュームとなる金額ベースはデバイス事業、利益率の向上はソリューション事業がけん引しています」(同氏)
グループ16社のシナジー創出進め
稼げるビジネスモデル確立目指す
24年4月から始まった中期経営計画「Make New Value 2026」では、「企業価値向上~稼ぐ力の向上~」をテーマに、27年3月期までに連結売上高3000億円、連結営業利益110億円の経営目標を掲げている。
同社グループは、萩原電気ホールディングスの下、デバイス事業を担う萩原エレクトロニクスと、ソリューション事業を担う萩原テクノソリューションズ、萩原エンジニアリングを中心に16社の事業会社で構成される(下図参照)。今後はデバイス事業、ソリューション事業のそれぞれでソリューション型領域の拡大を推進。さらにグループ横断による新しいシナジーの創出などを進め、プロフェッショナルな顧客に対し、会話や提案できる人材育成を強化していく。
また24年7月には、萩原テクノソリューションズを通じ、IoTアナリティクスプラットフォームを擁するシンガポールのBellaDati社を買収した。同社とは22年から戦略的パートナーシップを締結し、クラウド基盤サービス「コトづくり支援サービス」を展開してきた。今回のグループ参画により、データを価値化することで収益化できる新たなプラットフォームビジネスモデルの確立・拡大を目指す。
「子会社化により、BellaDatiの拡販をスピードアップさせます。データ活用の仕組みづくりに悩まれているお客様へ遡及できると期待しています」(同氏)
株主還元では、25年3月期の年間配当予想は185円、配当性向47・9%を計画する。