東北特殊鋼 【5484・スタンダード市場】

自動車エンジンバルブ用耐熱鋼で国内首位 EVシフト迎え、半導体装置向けにも注力

 東北特殊鋼は、自動車のエンジンバルブ用の耐熱鋼と燃料噴射装置用電磁ステンレス鋼で国内トップシェア(同社調べ)を持つ。東北大学の要素研究を礎とした金属製造と加工技術が強みだ。主要取引先の自動車業界はEVへの転換期を迎えた。それに伴い、同社で特殊鋼売上の7割を占める自動車向けは今後、需要が緩やかに下降していく見込みだ。対策として、半導体装置向けの特殊鋼に注力するとともに、社内の風土改革を進める。
東北特殊鋼-成瀬 真司

成瀬 真司(なるせ しんじ)

社長

1958年9月生まれ、愛知県出身。82年慶應義塾大学法学部卒業後、大同特殊鋼入社。2012年取締役経営企画部長、15年常務執行役員、16年大同興業常務取締役、19年東北特殊鋼代表取締役社長に就任(現任)。

特殊鋼の7割が自動車向け
耐熱鋼と電磁ステンレスに強み

宮城県を地盤とする同社は「特殊鋼」と「不動産」の2分野で事業を展開する。「特殊鋼」とは、鉄と炭素から成る鋼に、ニッケルやクロム、マンガンなどの元素を加えて精製する特殊な鋼を指す。混ぜ込む元素により強度、耐熱性、磁力、柔軟性など用途に合わせた様々な特性を付与できる。売上の約9割を占める特殊鋼事業では、素材の製造だけでなく加工、部品の鋳造、熱処理加工まで顧客の要望に合わせて提供している。

同社の特殊鋼の約7割が自動車の内燃機関向けだ。残りの3割が非自動車で、半導体製造装置や産業機械向けなどになる。自動車向けの特殊鋼の主用途は内燃エンジン用バルブと燃料噴射部品で、いずれも国内シェアトップだ(同社調べ)。

不動産事業では、仙台市内の工場跡地を活用した賃貸業を展開。営業利益は年間11億円ほどで安定的な収益を上げている。

2023年3月期連結業績は、売上高が前期比8・4%増の215億5700万円、営業利益が同36・2%減の12億9700万円となった。電力や副資材の価格高騰が利益に響いた。親会社の大同特殊鋼を経て、東北特殊鋼の社長となった成瀬氏は現状に危惧の念を抱いている。

「今までは自動車向け特殊鋼生産に工場を最適化し、高性能・高品質な製品を作り続けることで業績を伸ばしてきました。しかし、現在の自動車業界はガソリン車からEVへシフトしている。当社で主力のエンジンバルブの需要はすぐには消失しませんが、緩やかに下降していくことは間違いない。私が社長に就任した4年ほど前から、社員には危機感を持ってほしいと伝えてきました。ようやく社内も変わり始めています」(成瀬真司社長)

有料会員限定

続きを閲覧するには会員登録が必要です。
すでに会員の方は
ログインして閲覧してください。

ログイン SEARCH