鴻池運輸 【9025・プライム市場】

第1回 歴史が示すKONOIKEの仕事
140年を超えて受け継がれる精神

「社会ニーズに応えることで事業は拡大する」
普遍的な事実であるが、140年以上にも渡って、それを続けるということは、並大抵のことではない。
鴻池運輸は1880年の創業以来、それを実践し、業績拡大を実現してきた数少ない企業のひとつだ。
同社には時代を超えても変わらない精神がある
前史
1880~1945年
大阪経済の礎を築いた鴻池忠治郎

鴻池運輸の創設者は、鴻池忠治郎。1852年、水運の玄関口として賑わう大阪に生まれた。明治維新が起きる激動の時代に青年期を経た忠治郎。その人柄は独立心旺盛、竹を割ったような気性の反面、義理人情に厚く周囲に人が絶えなかったという。

1880年に「鴻池組」の名称のもと、労務供給業・運輸業を開始。この年を鴻池運輸の創業年と定めている。
たびたび甚大な水害を起こす淀川の治水のため、丸5年をかけた新淀川開削工事や、台風による洪水堰き止め工事を完遂。重機がなく築堤は人力の時代、忠治郎は多くの人員を集め、持ち前の精神力と統率力で部下を鼓舞。参加した軍を上回る活躍を見せ治水は成功し、周囲の人を驚かせた。

この誠実・愚直に作業に取組み、あきらめない姿勢は“KONOIKEスピリット”として今も大切に受け継がれている。水害を受けていた地域は天満橋や淀屋橋など現在の大阪の中心地も含まれ、同社は近代大阪の隆盛の礎を築く一助となった。

日清戦争後の1900年、日本民間初の鋳鋼所が誕生し荷役と運搬業務(原材料の搬出入や構内運搬)を請け負う。これが現在も続く「工場内請負業務」の原点だ。日露戦争で鋳鋼所は繁忙を極め、仕事も増大。重量物の特殊運搬や大型機械据え付けなどの業務も一貫で手掛け、工場内請負業務の基盤を固めた。

近代化・機械化を進め1933年にはトラックによる陸上輸送事業を開始。大量貨物輸送を可能にした。既存の海運事業と合わせ海陸一貫輸送体制を確立、物流で日本活性化の一端を担っていく。

鴻池運輸前史

▲1880年、大阪の傳法(現在・大阪市此花区)で労務供給業・運輸業を開始した

 

第1章
1945~1980年
運搬・工場内作業で高度経済成長を支える

軍需会社法で定められた原則「一社一業」により、鴻池組から運輸部門を独立させ、1945年5月に「鴻池運輸」を設立。鴻池運輸設立から3か月後の1945年8月、日本は終戦を迎える。

戦後混乱期からのスタートだったが、鴻池運輸は戦時中に爆撃を受けた工場の解体工事など、戦後処理関連業務や進駐軍の家族用住宅の建築で成長を遂げる。
1950年の朝鮮戦争の特需で三白景気(紙、砂糖、肥料)が起こった。産業界では設備投資が本格化し、同社は肥料荷貨作業、1951年には砂糖を皮切りに洋酒メーカーなど食品関連事業をスタートさせた。

時代は高度経済成長に突入し、大量生産・大量消費へ。自動車や建材など鉄鋼メーカーは急激に生産規模を拡大、同社は工場内作業や運搬、設置を担い支え続けた。技術者の働きが評価され、さらに重機開発やエンジニアリング、機械設備の設計など機工分野も業務は広がる。
1963年には海上運輸業務と倉庫業がスタートし各地営業所が増加。精密機械の運搬も増える。コンピューター導入にも積極的で、1980年には倉庫内業務で初のオンライン化を実現した。

第2章
1981~2000年
事業多角化へ、バブル崩壊も最高業績

2度の石油ショックを経て、景気は低迷。産業の複雑化により少量多品種生産の時代に入り、ここから鴻池運輸は事業多角化に舵を切る。
まずは物流の全国展開。引越し事業にも参入し地方拠点を拡大した。海外戦略もスタートし、日本と台湾を結ぶ「フェニックス号」就航。シンガポールやロサンゼルスにも現地法人を開設する。加えて、冷凍冷蔵品の加工運搬、倉庫など低温物流拠点を拡充した。1982年には人材派遣業を開始する。
急激な円高による輸出の落ち込みで輸入貨物の保税のための倉庫需要が高まりを受け、1988年に大規模物流センターを開設。あらゆる貨物から関連業務を一貫して請け負った。

1994年には関西国際空港開港で空港業務にも携わり、陸海空と事業拡大。同年、医療関連分野に参入する。医療法改正に合わせ、病院の滅菌代行業務をスタート。病院内の物品管理業務・システム開発から販売、運用まで一貫して提供するサービスも販売する。
バブル崩壊後の厳しい状況下だったが、1997年9月期は売上高約1268億円と多角化・広域化の強みが発揮されたこともあり、創業以来最高業績を達成した。

第3章
2001~2010年
環境対応と高度グローバル化推進

2000年には高齢化で介護保険制度が導入され、翌年には福祉観光バス事業を開始した。
医療分野は順調に拡大を続け、日本最大規模の滅菌会社へと成長。契約病院数・院内物流実績・サービス拠点数は全て国内トップクラス、日本初の手術器械専用洗浄センターを開設した。海外事業も注力しており現地物流、アメリカ冷蔵・冷凍倉庫事業を強化した。

環境問題対応のためエコドライブへの取組みや低燃費・低公害者導入を促進。2009年には2基目のRC資源循環炉が運転開始した。製鉄所や自動車メーカーから出る鉄・亜鉛・炭素を含む産業廃棄物を集荷し、1300℃の高熱で分解・還元。再び鉄と亜鉛の原料として蘇らせている。

創業から140年超─時代に合わせ日本経済を支え、常に進化してきた鴻池運輸。
しかし、創業者から受け継がれたスピリット「やり遂げる粘り強さと旺盛なチャレンジ精神」は変わらない。今後の舞台は世界とし、グローバル展開を加速させる。

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