長期ビジョンで未来を拓く8企業

長期ビジョンで未来を拓く8企業

 

Chapter 1
ビジネス領域を拓く
初めに、持ち前の強みを武器に、ビジネス領域の拡張を進める企業を紹介。
いずれも業界では独自ポジションを築く実力者だ。

 
サンゲツ(8130・P・愛知県名古屋市)

空間創造ソリューション提供会社へ進化
飛躍に備え人材やデジタルへ積極投資中

サンゲツは、壁装材、床材、カーテン、椅子生地などあらゆる内装材を扱うインテリア最大手。2020年に策定した長期ビジョン【DESIGN 2030】では、「スペースクリエーション企業」への昇華を目標に設定した。空間創造に関するソリューションを提供し、商品のみならず空間を創造し、コトを提案・実現する会社へと転換する。また、エクステリア(外装)や海外事業にも注力。24年3月期の売上高1898億5900万円、営業利益191億300万円を、30年3月期に売上高2500億円、営業利益270億円まで押し上げる。

同社は江戸時代の1849年に、襖や屏風、障子をしつらえる表具師として「山月堂」をスタート。戦後に住宅が洋風化すると、壁紙の需要が拡大した。壁紙などの内装材は施工現場の最後に使用されるため、発注が後回しにされがちな傾向がある。そこで同社は、全国の物流拠点に商品を常備在庫として保管。最短で即日配送する体制を整え、施工現場の信頼を築いてきた。現在の商品数は約1万2000点と世界有数の規模を誇り、壁紙の国内シェアは50%を超える。

2025年3月期は、売上高が引き続き過去最高を更新する見込み。一方利益面では、人件費・物流費・原材料の高騰、将来の成長に向けた先行投資などにより2桁減を予想する。こうした状況で進める25年3月期までの中期経営計画では、現在を「次の飛躍に備える3年間」と定義。礎となる人的資本・デジタル資本へ積極投資している。人材面では職場環境整備やキャリア人材の採用強化に加え、24年3月に東京で新オフィスを開設。パートナー企業など社外とも共創する場を作り、空間創造を通じたソリューション提案力に磨きをかける。一方デジタル面では、商流・物流データ活用を通じての営業・物流の効率化を進めている。「商品、物流・配送」はもともとの強みではあるが、これらの分析・最適化でコスト削減による利益向上などが期待できる。

また、長年培ってきた内装材の知見を基に、空間コンセプト策定や設計、施工、商品販売に留まらない「空間総合提案」事業も育成。こうした案件は24年度上期に約130件となった。


▲壁紙を中心に多様な内装材を揃える

▲東京新オフィスの内観
Akihiro Itagaki(Nacasa & Partners)

 

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