森 拓也社長◉Profile◉もり・たくや1956年1月生まれ、愛知県出身。79年京都大学工学部卒業後、ピー・エス・コンクリート(現:ピーエス・コンストラクション)入社。2010年取締役執行役員・技術本部長兼工務監督室長・安全品質環境担当、16年代表取締役副社長・副社長執行役員技術本部長・安全品質環境担当兼海外事業担当を経て、20年代表取締役社長・社長執行役員全般統理に就任。22年に代表取締役社長執行役員・全般統理に就任(現任)。
プレストレスト・コンクリート技術に強み
橋梁新設、耐震、老朽化対策などで独自工法開発
高速道路の大規模更新工事が成長を牽引
ピーエス・コンストラクションは、土木・建築分野に展開するゼネコンである。プレストレスト・コンクリート(PC)技術を国内で初めて事業化し、以降もPCのリーディングカンパニーとして多くの工法を開発。橋梁の新設工事を中心に、インフラ整備に携わってきた。近年では高速道路の大規模更新工事への対応を強化しており、同分野は新設橋梁と並ぶ事業の中核となっている。
橋梁新設で国内シェア15%超
売上構成は土木6割、建築4割
ピーエス・コンストラクションは、「プレストレスト・コンクリート(以下:PC)工法」のパイオニアとして知られる。PCは、引張力に弱いコンクリートの弱点を克服するため、あらかじめ圧縮力(プレストレス)を与えて、大きな張力が作用してもひび割れを制御できるコンクリートの工法だ。
日本で初めてPC技術を事業化した同社では、1952年に、日本初のPC道路橋を施工した。以降、橋梁の新設工事では15%以上のシェアを堅持しており、施工数は約3万橋(※1)に及ぶ。現在、土木における新設とリニューアル工事の割合は半々で、受注先は主に国や自治体、NEXCOなどの道路会社。またPC技術は建築分野でも活用され、行政・教育・文化・スポーツ施設など、大規模建築を含む数多くの実績を持つ。
2024年3月期の売上高は前期比18・3%増の1292億9400万円、営業利益は同37・0%増の78億2700万円。セグメント別の売上構成は、土木事業58・1%、建築事業35・6%、製造事業5・6%。なお同社では、土木・建築現場で使われるPC部材をあらかじめ工場で製造する「プレキャスト・プレストレストコンクリート(以下:PCaPC)工法」を得意としており、製造事業は工場での部材製造が該当する。
技術開発による独自工法に強み
高速道路の更新でも技術採用
同社は土木分野の旧ピー・エスと、建築分野の旧三菱建設が02年に合併。23年に大成建設にグループインし、24年に現在の社名に変更した。創業当時から今に至るまで変わらないのが、「技術追求」への姿勢である。
「当社では経営理念の一節で『新しい技術開発へのチャレンジ』を謳っています。組織体系においても、『土木』・『建築』・『管理』と同列で『技術本部』を設けています。各部門にのみ留まるのではなく、横断的広範囲かつ長期的視座での技術開発を長年続けてまいりました。これにより、橋梁建設、耐震補強、老朽化対策など、さまざまな分野で複数の独自工法を保有しており、かつアップデートを続けています。技術力が受注時の競争優位性になっています」(森拓也社長)
近年の成長ドライバーとなっているのが、高度経済成長期に建設が進んだ高速道路の老朽化に伴う大規模更新工事である。鋼橋のコンクリート床版の取替作業などで、同社の独自工法が活かされている。
「建設従業者の減少、熟練工の引退、カーボンニュートラルの観点からも、PCaPCへの需要が高まっています。同工法ではあらかじめ工場で作成した床版を設置しますので、現場の工期が短縮でき、省力化に繋がっています。また近年は片側2車線道路であっても交通量確保のために1車線ずつ工事を行いたいという需要があり、NEXCOと共同開発した『半断面床版取替工法』の採用も拡大しています。また耐震化ニーズも発生しており、当社では支承取替や落橋防止システム設置の他、PCaパネルによる独自の橋脚補強技術を用いて施工しています」(同氏)
他にも近年では、メンテナンスに対する需要も高まっている。凍結防止剤を多用する積雪地や海岸付近では、塩害によるコンクリートの劣化が課題である。同社では約40年前から『独自の電気防食工法』を実用化してきたが、現在電気をコンクリートに流し、コンクリート内部に浸透した塩化物を除去する脱塩工法を開発し補修工事へ採用されている。
また高速道路のリニューアル工事では、既設の構造物でPCケーブル内の充填材(グラウト)が不足している箇所があり、最悪の場合、PCケーブルが腐食による破断によって橋の崩落に繋がる可能性もある。そこで同社では、独自技術による『グラウト再注入工法(リパッシブ工法)』を開発しており、こちらも採用が増えている。
「高速道路6社による大規模更新は、2007年の発表では15年間で5兆5000億円が計画されていましたが、その後の定期点検などで更に1兆5000億円が追加となり、長いスパンで需要が続く見込みです。当社は今後も国内トップクラスのPCゼネコンとして、技術力によって社会に貢献していきます」(同氏)