24年2月期売上高約87億円見込む
過去最高更新、前期比では52・5%増
波長変換した光の用途は多様
同社が開発と製造を手がけるのは、光を発するレーザと、光を透過して波長(性質)を変える単結晶だ。元のレーザの光自体は波長が決まっているが、結晶を透過することで波長が変換され、様々な光を出すことができる仕組みだ。波長変換された光は、半導体検査装置など多岐にわたり用いられる。
直近の24年2月期第1四半期は、売上高は13億5900万円、営業損失は4800万円だった。売上高は前年同期と比べ、やや弱含みでスタートした。製品の市場別では、半導体事業は、前期第3四半期に顕在化した一部調達部材の不具合問題は依然残ってはいるものの、計画どおりの売上となった。ヘルスケア事業は、主要顧客での前期第4四半期から続く在庫調整が影響し、計画を若干下回った。新領域事業は、前年のスポット売上の解消により例年並みの水準となった。
24年2月期連結業績予想は、売上高は過去最高の87億7300万円、営業利益は4億7100万円だ。
セグメントは「半導体事業」「ヘルスケア事業」「新領域」の3つ。売上の56%を占める「半導体事業」は、半導体ウエハの欠陥検査装置に組み込まれる単結晶とレーザの開発・製造。単結晶については世界で約95%のシェアを誇る。
半導体製造工程の「前工程」と呼ばれるウエハ処理工程では、投入するシリコンウエハの品質検査が半導体チップの歩留まり管理上不可欠であり、専用のウエハ検査装置が利用されている。
「半導体市場は踊り場になったと言われていますが、検査装置向けではまだまだ引き合いがあります。売上は伸びている」(古川保典社長)
31%を占める「ヘルスケア事業」は、がんを診断するPET検査装置に搭載されるシンチレータ(※1)単結晶の開発、製造だ。
PET検査装置はがんの診断以外にアルツハイマー型認知症の診断にも用いられる。
「エーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病の新薬により、今後PETによる検査の需要は高まる見込みです」(同氏)
13%の「新領域」では、パワー半導体向けのSiC単結晶など、新規材料の開発や既存結晶の改良を手がける。
※1 放射線や荷電粒子が通過すると発光する物質の総称
「結晶屋やレーザ屋の楽園」
開発・技術力に強みを持つ同社だが、「各事業で大手メーカーから引き継いだ優秀な人材と技術によるところが大きい」(同氏)という。
結晶事業は元々、東芝や日立など日本の大手電機メーカーが得意としていた。しかし、2000~10年代にかけて、システムなどに比べ売上の小さい同事業からの撤退が相次いだ。バブル後の不況やリーマンショックの影響により、各社で事業の再構築が進んだためだ。
「その流れの中で設備や技術、人員を引き受けてきました。いわば、各社の事業で最後まで生き残った人材が当社にやってきたのです」(同氏)
大手企業の技術者は常に売上や収益化へのプレッシャーを受けてきたという。
「一方、当社では売上が1000万円の案件でもお客さんが喜ぶならやりましょうと、新しいことに挑戦できる。お客さんの問題解決に貢献した実感が得られるので、どんどん生き生きとしてきます。当社は結晶屋やレーザ屋の楽園みたいな環境です」(同氏)
また同じ製品でも各社で製造レシピは異なる。さまざまな企業から転職者が集まることで、開発に活かせるメリットもあるという。
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