ニッチトップ商品多数の合成樹脂繊維メーカー 萩原工業 【7856・プライム市場】

「フラットヤーン」技術を基盤にトップシェア獲得
国内外で新工場稼働、海外売上比率40%へ拡大図る

岡山県倉敷市に本社を置く萩原工業は、合成樹脂繊維の大手メーカーだ。国産ブルーシートで9割のシェアを持つほか、コンクリート補強繊維「バルチップ」や養生テープ基材など様々な製品で高いシェアを獲得している。収益性の高い付加価値製品に注力し、連結売上高はここ10年で約1・5倍に伸長。今期2025年10月期は過去最高の340億円を見込む。新たに南米・パラグアイでも新工場が本格稼働を始め、現地製造・販売による市場拡大を狙う。
萩原工業-浅野 和志

浅野 和志(あさの かずし)

社長

1963年8月生まれ、岡山県出身。86年広島大学工学部卒業、萩原工業入社。2004年事業支援部総務部マネージャー、07年取締役事業支援部総務部マネージャー、10年執行役員事業支援部門長、11年取締役執行役員事業支援部門長、14年取締役執行役員合成樹脂事業管掌補佐、15年取締役常務執行役員合成樹脂事業管掌補佐兼ハギライン事業部長、16年代表取締役社長 社長執行役員兼合成樹脂事業部長、17年代表取締役社長 社長執行役員(現任)。

合成樹脂加工製品と機械の2本柱
建築・農業・防災などで活躍

萩原工業の中核技術は、合成樹脂繊維の「フラットヤーン」だ。フラットヤーンとは、ポリエチレン、ポリプロピレンのフィルムを短冊状に切断し、延伸することで強度を持たせた平らな糸のこと。同社はこのフラットヤーンを素材とした合成樹脂製品や、フラットヤーンの製造で培った「切る・伸ばす・織る」の技術を応用した産業機械を製造している。

2024年10月期の連結業績は、売上高331億1800万円(前期比6・0%増)、営業利益20億9700万円(同6・0%増)。主力は、売上の約8割を占める「合成樹脂加工製品事業」だ。

同事業の製品分類別の内訳は、シート、ラミクロス、土のうなどの建築資材及びフレコンバッグを含む「産業資材」が約44%。粘着テープ関連、人工芝用原糸・メルタックなどの「生活資材」が約33%。インフラ・建設・鉱山向けの「バルチップ」が約20%。

同社の成長を牽引する大黒柱の製品が、建設用、農業用、防災用など多様な用途に向けた各種シート。そしてコンクリート補強繊維のバルチップだ。バルチップはコンクリートを補強するプラスチック製繊維で、コンクリートに混ぜると耐久性向上やヒビ割れ防止の効果が得られる。従来、コンクリートの補強にはスチール製ファイバーが使われていたが、金属はコンクリートに含まれる水分により錆びることで膨張し、コンクリートがヒビ割れる。その点、バルチップはスチール製ファイバーに比べ軽量、かつ錆びない。また鉄筋を省略できる工法では、工期や価格も抑えられる。そのため鉄に代わる素材として、05年頃から本格的に導入が進んだ。18年にはバルチップの海外販売代理店EPC社を買収。世界55カ国で使用実績があり、20年度には経済産業省の「グローバルニッチトップ企業100選」にも選ばれた。

「バルチップを混ぜたコンクリートは、20年経つとヒビの入り方が全然違うので一目瞭然です。強度が高いものを独自に研究開発し、それを大手建設会社が採用してくれて国内に売り出し、海外にも出て行きました。今ではNEXCO西日本のトンネルには全部入っています」(浅野和志社長)

総売上高の約2割を占めるのが、「機械製品事業」だ。紙やフィルムを裁断するスリッターは、汎用機で2000万~3000万円程、金属箔用は1億~2億円程の機械もある。全て受注生産で、現在は約48億円の受注残高がある。

「コロナの時は部品の調達難により未完成の在庫が増え、受注残高が65億円となりました。当社としては45億~55億円が一番良いです。スリッターは、素材の需要と共に伸びていきます。直近ではリチウム電池のセパレーターフィルム用が伸びましたが、中国と価格競争になってすぐに撤退しました。今は電極用や金属箔用スリッターに注力しています」(同氏)

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