合成樹脂加工製品と機械の2本柱
建築・農業・防災などで活躍
萩原工業の中核技術は、合成樹脂繊維の「フラットヤーン」だ。フラットヤーンとは、ポリエチレン、ポリプロピレンのフィルムを短冊状に切断し、延伸することで強度を持たせた平らな糸のこと。同社はこのフラットヤーンを素材とした合成樹脂製品や、フラットヤーンの製造で培った「切る・伸ばす・織る」の技術を応用した産業機械を製造している。
2024年10月期の連結業績は、売上高331億1800万円(前期比6・0%増)、営業利益20億9700万円(同6・0%増)。主力は、売上の約8割を占める「合成樹脂加工製品事業」だ。
同事業の製品分類別の内訳は、シート、ラミクロス、土のうなどの建築資材及びフレコンバッグを含む「産業資材」が約44%。粘着テープ関連、人工芝用原糸・メルタックなどの「生活資材」が約33%。インフラ・建設・鉱山向けの「バルチップ」が約20%。
同社の成長を牽引する大黒柱の製品が、建設用、農業用、防災用など多様な用途に向けた各種シート。そしてコンクリート補強繊維のバルチップだ。バルチップはコンクリートを補強するプラスチック製繊維で、コンクリートに混ぜると耐久性向上やヒビ割れ防止の効果が得られる。従来、コンクリートの補強にはスチール製ファイバーが使われていたが、金属はコンクリートに含まれる水分により錆びることで膨張し、コンクリートがヒビ割れる。その点、バルチップはスチール製ファイバーに比べ軽量、かつ錆びない。また鉄筋を省略できる工法では、工期や価格も抑えられる。そのため鉄に代わる素材として、05年頃から本格的に導入が進んだ。18年にはバルチップの海外販売代理店EPC社を買収。世界55カ国で使用実績があり、20年度には経済産業省の「グローバルニッチトップ企業100選」にも選ばれた。
「バルチップを混ぜたコンクリートは、20年経つとヒビの入り方が全然違うので一目瞭然です。強度が高いものを独自に研究開発し、それを大手建設会社が採用してくれて国内に売り出し、海外にも出て行きました。今ではNEXCO西日本のトンネルには全部入っています」(浅野和志社長)
総売上高の約2割を占めるのが、「機械製品事業」だ。紙やフィルムを裁断するスリッターは、汎用機で2000万~3000万円程、金属箔用は1億~2億円程の機械もある。全て受注生産で、現在は約48億円の受注残高がある。
「コロナの時は部品の調達難により未完成の在庫が増え、受注残高が65億円となりました。当社としては45億~55億円が一番良いです。スリッターは、素材の需要と共に伸びていきます。直近ではリチウム電池のセパレーターフィルム用が伸びましたが、中国と価格競争になってすぐに撤退しました。今は電極用や金属箔用スリッターに注力しています」(同氏)
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