自動車、半導体、医薬でニッチトップ製品多数 日本化薬 【4272・プライム市場】

『世界的すきま発想。』掲げる総合化学メーカー
新事業・新製品創出に向け組織横断での改革推進

日本化薬は、自動車用安全部品や半導体向けエポキシ樹脂、抗がん剤など、さまざまな産業向けに製品を提供する総合化学メーカーだ。『世界的すきま発想。』をスローガンに掲げ、高付加価値なニッチトップ製品を多数生み出している。中期事業計画では「新事業・新製品の創出」を最重要課題とし、組織改革やオープンイノベーション活用を推進。2030年の上市を目処に、新たに環境エネルギー分野での新製品開発にも注力している。
日本化薬-涌元 厚宏

涌元 厚宏(わくもと あつひろ)

社長

1957年3月生まれ、東京都出身。79年早稲田大学商学部卒業後、日本化薬に入社。2008年セイフティシステムズ事業本部グローバル事業統括部長に就任。10年セイフティシステムズ事業本部営業統括部長。12年執行役員、16年取締役常務執行役員、18年セイフティシステムズ事業本部長。19年代表取締役社長(現任)、社長執行役員に就任(現任)。

安全部品から機能性材料、抗がん剤まで
均衡した3つの事業領域全て増収増益

同社は、現在、3つの事業領域を展開する。1つ目の「モビリティ&イメージング」は、エアバッグ用インフレータなどの自動車安全部品を製造するセイフティシステムズ事業、車載向け偏光板などを製造するポラテクノ事業を展開する。2つ目は、半導体製造に使われるエポキシ樹脂などの機能性材料、インクジェットプリンター用などの色素材料、紙オムツなどに使われる樹脂原料製造用の触媒を展開する「ファインケミカルズ」。そして、抗がん剤などの医薬品や、農薬を製造する「ライフサイエンス」だ。

2025年3月期の通期業績予想は、連結売上高が2237億円(前期比10・9%増)、営業利益211億円(同187・6%増)。事業別の売上高比率と営業利益率はそれぞれ、「モビリティ&イメージング」が約41%・約44%、「ファインケミカルズ」は約30%・約35%、「ライフサイエンス」は約29%・約22%となる。売上高・営業利益ともそれぞれ、バランスの良い事業構成が特徴で、今期は全セグメントで増収増益となる見込みだ。


同社は『世界的すきま発想。』というスローガンを掲げるように、大手企業と競合しにくい「すきま」市場を見つけ、ニッチ戦略を基本に事業を拡大してきた。各製品群のターゲット市場規模は、数億~数百億円と大きくないものの、それぞれ高いシェアを持つ。

「各領域でニッチトップ製品を生み出し、全体の売上高のトップラインを伸ばしているのが当社の特徴であり強みです」(涌元厚宏社長)

例えば、自動車のシートベルトプリテンショナー(シートベルトを瞬時に巻き取る安全装置)に組み込まれているマイクロガスジェネレータや、各安全部品に組み込まれている点火装置のスクイブは、3~4割のシェアを占め世界シェアトップだ。

「スクイブはエアバッグの一番肝になる部品で、他の箇所も合わせると自動車1台に10個程搭載されています。車の年間生産台数が約9000万台とすると総個数で約9億個。当社は23年度には約3億2000万個を生産しましたから、新車の3分の1には必ず当社の製品が使われている計算になります。安全装置の精度を保証する不可欠な製品のため、要求される性能は非常に高い」(同氏)

その他の領域でも、環境対応型の半導体封止用エポキシ樹脂は世界約4割のトップシェア。抗がん剤関連製品は、国内メーカー最多の51品目のラインアップを誇る。

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