安全部品から機能性材料、抗がん剤まで
均衡した3つの事業領域全て増収増益
同社は、現在、3つの事業領域を展開する。1つ目の「モビリティ&イメージング」は、エアバッグ用インフレータなどの自動車安全部品を製造するセイフティシステムズ事業、車載向け偏光板などを製造するポラテクノ事業を展開する。2つ目は、半導体製造に使われるエポキシ樹脂などの機能性材料、インクジェットプリンター用などの色素材料、紙オムツなどに使われる樹脂原料製造用の触媒を展開する「ファインケミカルズ」。そして、抗がん剤などの医薬品や、農薬を製造する「ライフサイエンス」だ。
2025年3月期の通期業績予想は、連結売上高が2237億円(前期比10・9%増)、営業利益211億円(同187・6%増)。事業別の売上高比率と営業利益率はそれぞれ、「モビリティ&イメージング」が約41%・約44%、「ファインケミカルズ」は約30%・約35%、「ライフサイエンス」は約29%・約22%となる。売上高・営業利益ともそれぞれ、バランスの良い事業構成が特徴で、今期は全セグメントで増収増益となる見込みだ。
同社は『世界的すきま発想。』というスローガンを掲げるように、大手企業と競合しにくい「すきま」市場を見つけ、ニッチ戦略を基本に事業を拡大してきた。各製品群のターゲット市場規模は、数億~数百億円と大きくないものの、それぞれ高いシェアを持つ。
「各領域でニッチトップ製品を生み出し、全体の売上高のトップラインを伸ばしているのが当社の特徴であり強みです」(涌元厚宏社長)
例えば、自動車のシートベルトプリテンショナー(シートベルトを瞬時に巻き取る安全装置)に組み込まれているマイクロガスジェネレータや、各安全部品に組み込まれている点火装置のスクイブは、3~4割のシェアを占め世界シェアトップだ。
「スクイブはエアバッグの一番肝になる部品で、他の箇所も合わせると自動車1台に10個程搭載されています。車の年間生産台数が約9000万台とすると総個数で約9億個。当社は23年度には約3億2000万個を生産しましたから、新車の3分の1には必ず当社の製品が使われている計算になります。安全装置の精度を保証する不可欠な製品のため、要求される性能は非常に高い」(同氏)
その他の領域でも、環境対応型の半導体封止用エポキシ樹脂は世界約4割のトップシェア。抗がん剤関連製品は、国内メーカー最多の51品目のラインアップを誇る。
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