創業120年の総合エンジニアリング会社 ダイダン 【1980・プライム市場】

産業施設向け需要増で過去最高業績予想
採用と人材育成注力し基盤固め進める

ダイダンは、病院や工場、商業施設など大型施設の空調・給排水・電気工事を一手に手掛ける総合設備会社だ。近年は半導体、車載用蓄電池、データセンターの市場拡大を背景に、工場などの「産業施設」向けが伸長。同工事の受注高も全体売上の6割近くまで占めるようになった。一方で、建設業界は人材不足や時間外労働規制などの課題に対応していかなければならず、同社を取り巻く環境は大きく変化している。2024年4月に就任した山中康宏社長は、中期経営計画 Phase2《磨くステージ》の経営方針を「人材戦略を基盤とした人づくりの実現により企業価値を高める」と定め、この3年間は採用と人材育成に注力すると語る。
ダイダン-山中 康宏

山中 康宏(やまなか やすひろ)

社長

1962年8月生まれ、奈良県出身。83年奈良工業高等専門学校卒業、ダイダン入社。2011年横浜支店長。12年東京本社営業副統括兼営業第四部長。15年東京本社営業統括。17年上席執行役員営業本部長。20年取締役常務執行役員東日本事業部長兼東京本社代表。21年取締役専務執行役員東日本事業部長兼東京本社代表。24年4月代表取締役社長執行役員(現任)。

空調・給排水・電気工事主力
半導体工場・データセンター等の受注約6割

ダイダンは、古くは住友総本店や日本武道館、関西国際空港旅客ターミナルビル、近年では長野オリンピック記念アリーナや羽田空港第二旅客ターミナル、東京駅前のJPタワーなど、創業から120年以上にわたり数々の大型施設の設備を手掛けてきた。

同社は1903年に大阪で創業。空調・衛生工事を主力とする大手設備工事会社の中では、高砂熱学工業、新菱冷熱工業に次ぐ業界3位に位置する。現在は大阪と東京の2拠点に本社を構え、売上の約6割を東日本の案件が占める。

2024年3月期の業績は、連結売上高1974億3100万円(前期比6・2%増)、営業利益108億7700万円(同29・1%増)。コロナ禍以降、過去4年間で売上は拡大している。事業別売上高比率をみると、空調・給排水衛生工事の「管工事」が84%と「電気設備工事」が16%となった。

 

国土交通省の「令和5年度の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)」によると、建設会社大手50社の受注高でみる建設市場は、この3年間で約3兆円の伸びを見せた。比例して、ダイダンの売上高も増加している。


※国土交通省「令和5年度の建設工事受注動態統計調査
(大手50社調査)」を元に作図

▲関西国際空港の内観

 
加えて同社が売上を伸ばした背景には、材料費、人件費の高騰のほか、半導体、車載用蓄電池、データセンターの市場拡大がある。

「半導体の製造過程では高性能クリーンルームの技術、車載用蓄電池の製造においてはドライルームの技術、そしてデータセンターはサーバーの熱を抑える大規模な空調技術が必要になります。そのため、高度な技術を持つ当社に直接依頼が来る状況となっています」(山中康宏社長)

これらに関連する「産業施設工事」の受注高は、23年3月期の912億円から、24年3月期には1452億円に伸長。全受注高の57%を占めるまでになった。

「それに伴い直接受注の比率も、直近の25年3月期第2四半期には53・1%まで増加しました。工場は設備の比率が高いため、直接受注することが多い。例えば半導体メーカーのラピダスさんからは直接お声掛けをいただいています。こうした工事は街中の再開発に比べて利益率が高い案件ですので、計画的に増やしています」(同氏)

一方で、ストックビジネスとなる既存施設のリニューアル工事は、例年全体の3~4割を占める。
「リニューアルは今までの信用で勝ち取っている仕事ですから、ある意味競争がありません。産業施設工事の増加とリニューアルをある程度維持する形で、利益を確保しようという計画です」(同氏)

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