半導体製造装置向け部品のメーカー商社 内外テック 【3374・スタンダード市場】

国内半導体産業の黎明期から発展に貢献
常に潮流掴み先行投資を継続、進化続ける

内外テック(3374)は、半導体産業分野で国内最古参のひとつ。黎明期から業界の発展に貢献してきた歴史がある。国内半導体メーカーが次々に誕生した1960年代、日本企業が半導体の世界トップシェアを獲得した80年代、米国との熾烈な貿易摩擦戦争と韓国・台湾が台頭した90年代、リーマンショックや東日本大震災による後退、その中での半導体製造装置産業の躍進、そして近年の半導体製造の国内回帰。栄枯盛衰激しい半導体業界で黎明期から今まで残っている企業は数少ない。時代の潮流を掴み進化を続けてきた同社の沿革、そして今後の戦略に迫る。
内外テック-権田 浩一

権田 浩一(ごんだ ひろかず)

会長

1957年2月生まれ。80年、埼玉銀行入行。84年、内外テック入社。86年、内外エレクトロニクス取締役就任。96年、内外テック常務取締役就任。99年、同社代表取締役社長就任。2012年、内外エレクトロニクス代表取締役会長就任。17年、内外テック代表取締役会長就任(現任)。

油圧機器の販売会社として誕生
時代に合わせて業態変化

「当社は1965年から約60年に亘り、半導体産業に携わってきました。60年代に、米国から半導体パッケージのエポキシ樹脂封止材を、米国から最初に日本に持ってきたのは当社です。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』と言われ国内製造が急伸した時代や、米国によるシェア奪回、韓国・台湾・中国の台頭で日本が一人負けした時代など、60年間で業界には大きな浮き沈みがあり、産業構造やプレイヤーも変化ました。当社の取引先や扱う製品も時代の変化に合わせて大きく変わりましたが『半導体産業で求められているものを提供する』という核は変わっていません。そして長い間業界にいるからこそ、いま見えてくるものがあります」(権田浩一会長)

内外テックは半導体関連装置を中心に、各種機械装置の製造に欠かせない空気圧機器や機械部品などを扱うメーカー商社。売上高は販売が約8割、半導体製造装置の組み立て、保守・メンテナンスなどの受託製造が約2割。近年は設計・開発機能を強化中だ。

同社の創業は1961年。油圧機及び油圧機器の販売会社として誕生したが、60年代半ばには名古屋の油圧機メーカーと共同で半導体用のエポキシ樹脂封止用(※)のモールドプレスの製造販売を開始している。主要取引先であった富士通の要請を受けて、69年には米国モートンケミカル社と総代理店契約を締結。半導体製造の工程は、シリコンウエハーの回路を形成するまでの「前工程」と、回路が形成されたシリコンウエハーを半導体チップに切り出して出荷する「後工程」とに分かれる。同社ではモートンケミカル社との契約により、この半導体製造装置の「後工程」におけるアジア初及び唯一の代理店となり、富士通・東芝・日立・シャープ・SONY・NECなど、あらゆるメーカーが顧客となった。ちなみにこの時に「前工程」を国内に持ち込んだのが、半導体製造装置メーカーとして現在世界3位の規模を誇る東京エレクトロン(8035)である。内外テックではこの後、国内や米国にて、後工程に関わる装置・部品の製造も行なってきたが、後工程分野の東南アジアへのシフトにより84年に海外から撤退し、国内拠点に戻した。その後、既に繋がりのあった東京エレクトロンとの取引が活発化し、後工程から前工程へと商社機能が拡大を遂げた。主力取引先となった東京エレクトロンの成長とともに、内外テックも保守・メンテナンス、組み立てまで事業を進化させ、現在に至る。

「当社の事業は、創業当時から一貫して『お客様起点』です。商社、製造、開発、メンテナンスなどの括りはなく、お客様が求めているものは全て当社の主戦場であり本業なのです」(同氏)

60年の間に半導体産業の構造は変わり、国内では顧客であった半導体デバイスメーカーは海外に競り負け、製造装置メーカーは発展を続けた。業界の変化に追随する俊敏性、先を見越した先行投資の継続が、同社を半導体黎明期から今に至るまで、業界の第一線に留めてきたのである。

※エポキシ樹脂封止材 エポキシは最も一般的な半導体封止材。半導体を熱、湿気、光、物理的衝撃などの外的要因から保護する材料であり、液体や気体などの物質が半導体に入り込まないようにする役割もある。

半導体製造の国内回帰受け
最先端の技術開発を提供へ

25年3月期第2四半期業績は在庫調整の影響により減収減益となったが、通期では下期からの回復を見込み増収増益を予想。同社では19年頃から開発機能強化に注力、設立以来最大の投資を実施。23年以降、江刺(岩手県奥州市)、厚木、仙台に次々と開発センターを開設し、半導体製造装置や真空機器等の知見を持った技術人員を増員。24年12月には岩手県奥州市にて新たな工場用地取得を予定している。

「経済安全保障の観点からも、潮流が『半導体製造の国内回帰』に向いており、産業にとって追い風となっています。今まで当社では倉庫や購買、アフターメンテナンスなど、バリューチェーンを拡大することでお客様のニーズに応えてきましたが、今お客様が求めているのは『最先端の技術開発』です。半導体開発は売上何兆円規模の企業でなければできませんが、当社ではその中でも一番大切な『真空と熱』に特化した開発を提供し、業界に貢献したい。現在はAIやIoTを活用し、大学や研究機関との守秘義務という意味でクローズ化されたオープンイノベーションの仕組みを強化しているところです。販売だけではなく、開発・製造まで一貫して提供できれば、それが究極のソリューションとなります」(同氏)

「真空と熱」の技術開発によりメーカーとして再び歩みを進めることで、ゆくゆくは半導体以外の産業への製品提供、そして他産業で得た知見・技術による半導体産業への貢献、という新フェーズも見据えている。「今後もうまく潮流を掴みながら、進化を続けていきたい」と同氏は語った。

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