橋梁・鉄骨のファブリケーター大手 駒井ハルテック 【5915・プライム市場】

風力発電設備や工場改革に110億円投資
収益力改善図り、営業利益率4%超目指す

駒井ハルテックは、橋梁や鉄骨工事を主力とするファブリケーター(鉄骨加工業者)大手。近年は注力事業として「インフラ環境事業」を展開しており、風力発電に使われる中型風車のメーカーとしての顔も持つ。2024年11月、同社は第2四半期(中間期)決算を発表した。決算を読み解くとともに、前半を振り返る。
駒井ハルテック-中村 貴任

中村 貴任(なかむら たかひで)

社長

1960年1月生まれ。1983年大阪市立大学(現・大阪公立大学)商学部卒業後、駒井鐵工所(現・駒井ハルテック)入社。2005年財務部長、09年執行役員、13年管理本部長、14年取締役、18年専務取締役兼専務執行役員、20年代表取締役専務兼専務執行役員、21年代表取締役社長(現任)。

橋梁・鉄骨事業が収益の柱
中型風力発電の開発にも注力

同社は1883年創業の駒井鉄工と1921年創業のハルテックが、2010年に合併して誕生した。主な事業セグメントは「橋梁事業」「鉄骨事業」「インフラ環境事業」の3つ。このうち、収益の柱となっているのは橋梁と鉄骨の2事業だ。

橋梁事業では橋梁や鋼構造物などの設計・製作から架設、補修までを一貫して提供している。これまでに明石海峡大橋など、多数の道路橋や鉄道橋などを手掛けてきた。

鉄骨事業は高層建築物、工場建物などの設計や製作、現場施工などを行う。麻布台ヒルズや国立競技場、東京スカイツリーにも同社製品が納められている。国土交通省が認定する業界最高位「Sグレード」の工場を2つ有している。

インフラ環境事業は2000年代前半から開始。橋梁・鉄骨の両事業で培ったノウハウを生かし、中型風力発電機を開発している。大型機を導入しづらい離島や山間部での導入に取り組んでおり、国内では神奈川県三浦市の宮川公園や食品加工会社の工場用電源として稼働。国外でもフィリピンや、ロシアの寒冷地域といった場所で導入されるなど、実績を積み上げてきた。

営業利益が黒字転換
工事原価見直しで利益確保

同社が発表した25年3月期第2四半期業績は、売上高216億2000万円(前年同期比21・5%減)、営業利益は2900万円(前年同期は8300万円の損失)となった。

事業別でみると、橋梁事業は部門売上高82億8200万円(前年同期比18・0%減)、セグメント利益は8億7600万円(同4・8%減)だった。橋梁の発注量減少などにより売上高は減ったが、工事の変更契約が発生したことなどからセグメント利益は堅調を維持した。

鉄骨事業では部門売上高130億6000万円(同23・4%減)、セグメント利益は1億5600万円(前年同期は3億2200万円の損失)となった。同事業では大型の再開発の計画見直しによる発注の延期や、工期の遅延などにより売上高は減少した。しかし、仕様変更などといった追加工事で、先行して発生した工事原価の見込み収益を精査し、計上したことなどにより収益を確保した。

インフラ環境事業では部門売上高1200万円(同90・0%減)、セグメント利益は1億9900万円の損失となった。同事業では現在、風力発電の試験研究や新たな洋上風車タワー製造設備といった先行投資を行っている最中だ。

部門別の売上構成比では橋梁事業が38・3%、鉄骨事業が60・4%、インフラ環境事業が0・1%だった。

25年3月期売上高は390億円(同29・6%減)、営業利益は4億円(44・7%減)を予想する。同別売上高では、橋梁事業が166億円(同18・9%減)、鉄骨事業が212億円(同38・0%減)、インフラ環境事業が7億円(同311・8%増)を見込む。


▲橋梁事業での施工事例

社長インタビュー

外部環境変化により中計を修正
成長戦略見直し 目標必達へ

駒井ハルテックは現在、2026年3月期を最終年度とする中期経営計画を進行中だ。そんな中、24年8月に中計の下方修正を発表。収益力の強化やインフラ環境事業を第3の収益に柱にするなどの内容を盛り込んだ意欲的な中計だったが、世界情勢の変化を受け修正を迫られることになった。修正に至った背景や今後の成長戦略について、中村貴任社長に話を聞いた。

鋼橋の発注量想定下回る

─中計の修正がありましたが、当初の想定と条件が異なったのですか。

当初の中計では2026年3月期に売上高600億円、営業利益50億円、営業利益率8.3%を目標値に定めていました。当初は鋼橋の発注量が15~20万トン(※)で推移する見通しでしたが、想定を下回り昨年度は13万8000トンにまで下がりました。このまま推移したら10万トンを割り込むのではという懸念すら抱きます。このほか、鉄骨事業では高層ビルでの工事内容の見直しで延期や中止の案件があり下降する見込みです。これら外部環境による変化を受けて24年8月に売上高430億円、営業利益18億円、営業利益率を4.2%に修正しております。

─インフラ環境事業の目標数値が最も下がっている理由は何ですか。

インフラ環境事業は海外案件での受注を見込んでおりました。既に陸上風車の導入が進められていたロシアを基軸に欧州地域へ進出するという想定でした。それがロシアとウクライナの戦争状態による影響などで、予定していた案件が止まってしまったものもあり、海外受注の不調により業績が下振れました。そのほか、円安などの影響で機材の調達が遅れており、活動の波に乗れなかったのも影響しています。

─それらを踏まえてどのような対策をとりますか。

橋梁事業では前期、受注効率を高めるため大型案件の獲得に注力していました。しかし、鋼橋の発注量が少なくなっている中、受注状況がさらに厳しくなっている状況もあります。当社は設計から架設までを一気通貫で行えることが強みです。受注高を増やすべく、今後は中小型の案件も獲得して増収を目指しています。

鉄骨事業では工場のDX化を進めているところです。具体的には、発注者側から来ていた図面の修正について紙をベースにして行っていたものをクラウドで一元管理するなど、管理体制の見直しを行っています。そのうえで部門収益ごとの採算性をどう担保するかなど、まだ改善の余地があると見込んでいます。中計目標を下げた分、必達数値として取り組みます。

─インフラ環境事業は引き続き育成を強化しますか。

現在では橋梁、鉄骨の両事業が会社の収益を支えており、そこで得た利益をインフラ環境事業に先行投資しています。国内唯一の中型風力発電メーカーとして、「災害に強い」「寒冷地にも対応できる」といった風車に対して付加価値をつけます。次代の駒井ハルテックを担う事業として成長戦略は緩めることなく、洋上風車タワーと陸上風車の製造ラインへの整備や拡張、橋梁と鉄骨両事業の工場改革に110億円を投資します。

─26年3月期予想の営業利益率予想は4.2%としています。これはどうとらえればよいですか。

24年3月期実績の営業利益率は1.3%です。26年3月期予想ではその3倍を超える4.2%に目標数値を定めました。数値を達成するためにも橋梁・鉄骨の両事業で培った技術力を落とさずに利益率の向上を目指します。25年には駒井ハルテックの創業から15年を迎えます。引き続き鋭意努力して収益力をあげていきます。株主の皆様には期待感を持ってほしいです。
※日本橋梁建設協会が発表した市場規模の推移から同社が試算


▲神奈川県三浦市の宮川公園に設置されている同社の風車
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