タカトリ 【6338・スタンダード市場】

Sicウエハー切断加工装置メーカー
パワー半導体向けで業績急拡大中

産業機械メーカーのタカトリが、パワー半導体向けウエハー素材の切断加工装置で急成長している。同社独自の高精度な加工技術が評価され、脱炭素社会に向けて需要が拡大する電気自動車(EV)関連企業を中心に受注が集中している。2022年9月期の連結売上高は前年同期比56・6%増の102億2300万円、営業利益は同246・5%増の13億5100万円。この3年で時価総額は約13・8倍、450億円と売上高300億円以下の中堅企業の中で増加率はトップとなっている(※1)。
※1 日本経済新聞 23年2月20日付 NEXT Company
タカトリ-増田 誠

増田 誠(ますだ まこと)

代表取締役社長

1963年生まれ。86年タカトリに入社。2009年に執行役員営業本部長、16年4月に代表取締役副社長兼営業企画部長などを歴任し、16年10月に代表取締役社長に就任(現任)。

ワイヤーが高速回転
硬いSicを高精度で切断

パワー半導体とは大きな電圧・電流を扱うことができる、電力の制御・変換を目的としたデバイスだ。太陽光発電や5G基地局、工場や作業現場の産業機器でも使われ、電気自動車(EV)ではバッテリーの電源供給を行ったり、モーターを低速から高速まで効率よく回したりと、「心臓部」の役割を果たしている。電子・繊維・医療の分野で産業機械の開発・製造を幅広く手掛けるタカトリでここ数年、業績を大きく押し上げているのが、このパワー半導体の製造に使われるウエハー切断加工装置だ。ウエハーの原材料はシリコンカーバイド(Sic)。従来のシリコン製に比べると電気抵抗が小さいため省エネ化・省電力化を実現できるが、非常に硬度が高く加工が難しい。

独自技術「マルチワイヤーソー」 を採用した装置

硬いSicを切断するため、同社では独自の「マルチワイヤーソー」技術を採用している。装置内でリールに巻かれた800㎞もの長さのワイヤーが時速90㎞の速さで切断部分まで回転。さらに断面にムラが出ないよう、粉末状のダイヤモンドを混ぜた自社開発のオイル「刃─YAIBA─」を切断媒体のワイヤーに供給しながら、直径6インチ(約15センチ)のSicインゴット(塊)から厚さ約500ミクロンの円盤状のウエハーを同時に複数切り出す。ここ数年は特に海外のEV関連メーカーから受注が急増。ワイヤーソー加工方式において、世界シェアは100%近いという。
「存在する競合他社の製品をすべて取り込んだ上で、お客様に利益が確実に出る商品づくりを心掛けており、当社の製品が事実上一択になっています」(増田誠社長)

2022年9月期の連結売上高は、当初の業績予想を大幅に上方修正し前年同期比56・6%増の102億2300万円、営業利益は同246・5%増の13億5100万円となった。納入先は中国を中心にアジアが63・3%、日本が26・2%、その他10・4%と海外比率が高い。セグメント別ではSic切断加工装置を展開する電気機器事業は販売実績で全体の97・3%を占め、前年同期比で70・3%増と売り上げに大きく貢献する。受注実績は実に同303・6%増となっている。

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