兼松 【8020・プライム市場】

「兼松モデル」の改革から20年、過去最高益を更新中 グループ一体経営を強化しDX、GXを推進

 2024年8月で創業135周年を迎える老舗総合商社の兼松。同社の利益が前期に引き続き、今期も過去最高を更新する見込みだ。かつて10大総合商社の一角を占めた同社はバブル崩壊後に一時失速したが、その後大規模な事業の選択と集中を行い復活を遂げた。現在は重点施策として「DX」「GX」に注力する。昨年度は兼松エレクトロニクスと兼松サステックをTOBで100%子会社化し、グループ一体経営の事業基盤強化も進めている。宮部佳也社長に総合商社としてのこれまでと今後について聞いた。
兼松-宮部 佳也

宮部 佳也(みやべ よしや)

社長

1982年米・南カリフォルニア大学卒。83年兼松江商(現兼松)入社。電子機器部長を経て2012年取締役、電子・IT部門副担当。13年取締役、車両・航空部門担当。14年執行役員制度拡充に伴い取締役退任、常務執行役員、車両・航空部門担当。18年取締役、専務執行役員、車両・航空部門長、大阪支社長、名古屋支店長、先進技術・事業連携担当。21年代表取締役社長(現任)。

食品から宇宙まで4部門展開
非資源特化の安定収益構造

同社の2023年3月期の連結業績は、収益9114億800万円(前期比18・7%増)、営業利益388億9600万円(同32・5%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益185億7500万円(同16・2%増)。前期に引き続き増収増益で着地し、営業利益と税引前利益は過去最高を更新した。

部門別の収益構成比は、「電子・デバイス」が31%、「食料」が37・4%、「鉄鋼・素材・プラント」が21・2%、「車両・航空」が8・9%。営業利益の構成比は「電子・デバイス」が52・3%、「鉄鋼・素材・プラント」が31・7%、「食料」が10・5%、「車両・航空」が3・8%。日用的な食品から、先端技術のITや宇宙関連まで幅広い分野で事業を展開する。非資源事業に特化しているため、他の総合商社と比較して資源市況に左右されにくい安定的な収益構造が特徴だ。

足元の業績は、市況上昇を受けた食糧事業や鋼管事業、原油価格の上昇により原油・石油製品の取引高が増加したエネルギー事業を中心にほぼすべての事業において増収となった。特に米国シェールオイル・ガスの鋼管事業は米国内エネルギー投資伸長と鋼管価格上昇により好調に推移したほか、ICTソリューション事業や食糧事業が好調だった。

2024年3月期は、連結収益9600億円(前期比5・3%増)、営業利益405億円(同4・1%増)、税引前利益360億円(同0・9%増)、当期利益235億円(同26・5%増)を予想。達成すれば3期連続の増収増益となり、全ての利益で過去最高を更新する。

「今期は当期利益のジャンプアップを考えています。兼松エレクトロニクスと兼松サステックをTOBで100%子会社化した分がプラスになります。それを除いてもコロナ禍から復活したビジネスもあり、それが一番の増益要因です。総還元性向は30~35%の方針ですが、当社は配当利回りが良いのでそこは維持していきたい。TOBによるネットDERの毀損部分は3年で1・0倍程度にする目標を立てた上で事業投資をしていきます」(宮部佳也社長)

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