浜松発の電子機器メーカー ASTI 【6899・スタンダード市場】

設立60年、時代に合わせ商材組み替えて成長
下請けと自社製品の両輪で売上700億円へ

浜松地盤のASTIは、1963年の設立以来、楽器やオーディオ、携帯電話など様々な製品の電子部品を作ってきたメーカーだ。現在の主力は二輪向け車載電装品とワイヤーハーネスで、同郷のスズキ・ヤマハ発動機の2社向けで売上の半分弱を占める。近年は、成長著しいインドでの受注獲得に注力。一方で、利幅の大きい自社製品開発も進める。売上の大きい下請け業、利益率の高い自社製品のどちらも育成し、2026年3月期に売上高700億円、営業利益30億円を目指す。
ASTI-波多野 淳彦

波多野 淳彦(はたの あつひこ)

社長

1962年生まれ、東京都出身。85年東京大学法学部卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。2008年在中国日本大使館公使、15年経済産業省中部経済産業局長。18年ASTI入社、常務取締役、経営本部長などを経て20年代表取締役社長就任(現任)。

地元に根を張った下請け企業
スズキ・ヤマハ発の部品を生産

ASTIの2024年3月期決算は、売上高が前期比2・0%減の636億700万円、営業利益は同18・0%増の22億3400万円。売上高をセグメント別に見ると、車載電装品事業が34・2%、民生産業機器事業が27・6%、ワイヤーハーネス事業が38・0%となる。3セグメントで共通するのが、いずれも電子製品の部品を作る下請け業という点だ。

車載電装品事業では、二輪や四輪の電子制御基板、エアコンパネル、カーラジオなど多様な部品を製造する。一方民生産業機器事業は、洗濯機用の電子制御基板や食洗器用操作パネル、産業用ロボットなどを展開。そしてワイヤーハーネス事業では、二輪・四輪・船外機用にワイヤーハーネスと関連製品を生産する。

売上比率で半分弱を占める主要顧客が、同じ静岡企業であるスズキとヤマハ発動機。他にもホンダやトヨタ系列、パナソニックなど様々な会社に供給している。

「元々当社は、浜松のお寺の三男だった創業者が、戦後に夫を亡くし子供を抱える母親の仕事を作るために、お寺の空き地に小屋を建て、そこでヤマハのピアノ部品を作る、ということからスタートしています。社会の変化に応じて生産品目は変わっていますが、現在の主力は、二輪用の車載電装品とワイヤーハーネスです」(波多野淳彦社長)

国内の四輪向けワイヤーハーネスは、矢崎総業、住友電気工業、古河電気工業、フジクラの大手4社でほぼ独占している。一方二輪向けワイヤーハーネスは、生産数も利幅も少ないため、大手にはそこまで魅力的な市場ではない。しかしASTIにとっては、競合が少ないために、収益力が大きい市場となる。

「民生用ワイヤーハーネスは価格が低いので、競争は激しい。それに比べて車載は民生よりも品質が高く、参入障壁は割と高い。その中で、大手がやらないところを当社がやる、という形で自然と棲み分けている」(同氏)

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