横浜冷凍 【2874・プライム市場】

2030年には連結営業利益100億円
売上至上主義から利益重視への転換期

「ヨコレイ」の愛称で知られる横浜冷凍は、1948年の設立から75年以上にわたり、「冷蔵倉庫事業」と「食品販売事業」の2本柱で事業を展開してきた。同社は2030年に向けたビジョンとして連結売上高1700億円、連結営業利益100億円、EBITDA170億円以上を掲げている。現在、26年9月期を最終年度とする新・中期経営計画(第Ⅱ期)の最中にあり、23年12月に就任した古瀬健児社長のもとで改革を進めている。
横浜冷凍-古瀬 健児

古瀬 健児(ふるせ けんじ)

社長

1962年9月生まれ、長崎県出身。86年長崎大学水産学部卒、横浜冷凍入社。2015年執行役員、19年取締役。23年12月、代表取締役社長就任(現任)。

「食品販売事業」売上70%
「冷蔵倉庫事業」利益80%

同社の事業セグメントのうち、売上比率は「冷蔵倉庫事業」が20~30%、「食品販売事業」が70~80%。しかし利益構成は前者が約80%、後者が約20%と逆転する。食品販売で売上、冷蔵倉庫で利益を担うビジネスモデルだ。

「もともとは終戦後に日本人に対してタンパク源を供給したい、という創業者の想いから横浜の市場で立ち上がった会社です。魚を安定供給するためには冷凍設備がいる、ということで、そのビジネスモデルが現在まで続いている」(古瀬健児社長)

「冷蔵倉庫事業」では、食品供給の要衝に冷蔵倉庫を建設。国内53拠点、国外(タイ)5拠点で100万t超の収容能力を有する。

冷蔵倉庫の運営は、協力会社などにオペレーションをアウトソーシングしている企業が多い中、同社は自社の社員が顧客の貨物を取り扱う。

「食品販売事業」は、国内・海外子会社で水産品を中心に農畜産品の輸入・加工・販売を手掛ける。

国内では上場企業には珍しく、買参権(水揚げする漁港の魚を直接買う権利)を有している。直接市場へ行ってその場で買い付け、自社で凍結もしくは加工し国内外に販売する。大量に買い付けるため良い商品を安く提供できるというメリットがある。また北米や東南アジア・北南米・豪州などのネットワークにより数千t単位で農畜水産物を調達する。

26年9月期までの中期経営計画
新設倉庫中心に省エネ化推進

同社は、2030年に向けた長期ビジョンを掲げ、連結売上高1700億円、連結営業利益100億円を定量目標に置いている。

23年9月期からは、新・中期経営計画(第Ⅱ期)にあたり、最終年度となる26年9月期には、売上高1500億円、営業利益65億円、EBITDA130億円を目指している。

ポイントとなるのは売上至上主義からの利益重視への転換だ。

「『冷蔵倉庫事業』は、設備投資を進めると償却が大きくなり、その回収に何年もかかるため数値を押し下げる要因になる。また『食品販売事業』も今以上に利益率を上げていき、その2つのバランスを見極めながら進めていく」(同氏)

「冷蔵倉庫事業」は、23年9月期のセグメント売上高318億円に対し営業利益66億円。これを売上高360億円に対し営業利益を80億円にまで引き上げる。

具体的には、新設倉庫を中心に太陽光発電システムなどの導入による電力削減効果、スマートコールドサービスの実現による生産性向上、25年1月に稼働予定のベトナムヨコレイ自動倉庫による売り上げ・利益拡大を期待する。

一方で、収容能力拡大のため更なる新設も計画する。

「冷蔵庫の需要は今後も伸びると考えており、特に製品、冷凍食品が増えると、かさ高の貨物で容積をとるので当然大きな冷蔵庫がいる」(同氏)

「食品販売事業」は23年9月期のセグメント売上高1019億円に対し営業利益率1・1%。これを売上高1140億円に対し営業利益率2・2%にまで引き上げる。

海外の売上比率も13%から26年までに15%以上へと伸ばす。輸出を強化する他、ベトナムで25年に稼働する物流センターが成長ブーストになるという。

「ブリのフィーレなど日本食レストランで提供される刺身は、北米だけでなくASEAN地区でも増加しているため、そちらにも販売を強化していく。一方、原料系では、例えば気仙沼で揚がるビンチヨウマグロなどは、シーチキンや缶詰の原料になる」(同氏)

目標達成への重要ポイント
組織見直しと人材育成重要視

同社が目標達成を果たすために重要視としているのが組織の見直しと人材育成だ。

今回同社では、事業総合企画部門と販売推進事業部と前浜加工推進部の3つを新設した。

事業総合企画部門は、他社でいえば経営戦略室で、会社の方針を決めていく部門だ。「当社では設備投資案件、M&A、大きな販売の変換・方向性を考えていく。そのかじ取り役を事業総合企画部門中心にやっていきます」(同氏)

加工場新設など、今後の設備投資の方向性を決定する。

「当社にとって用地探し、冷蔵庫の建設、収益性の検証などは非常に大きな問題。そこもしっかりやっていきたい」(同氏)

組織改編に加え、人事・評価制度も改革していく。

「社員の働きがいを高めるために力を入れていく。人的資本経営という言葉が肝になる」(同氏)

同社の場合、昇進は一般社員、主任、係長、課長代理とあった。その中で主任になるまでの期間が長くなっていたため、その主任の前にもう1つポジションを作り、3年くらいで主任になれる制度にし、若い社員のマイルストーンを明確化した。

また多様化に合わせ、社員寮の補助期間を撤廃。こうした細かい部分の見直しを図り、福利厚生の更なる充実化を行った。

一方、シニアに対しては、今のところ定年を引き上げるという直接的なことはやっていないが、これまでは55歳で役職定年だったものを見直すとともに、65歳からの嘱託制度の見直しを進めてていく。

また、女性幹部の登用にも力を入れる。

「昨年の12月に、今まで1名だった執行役員を2名にした。これからも男女隔たりなく自社から人材を育てていきたい」(同氏)


▲恵庭スマート物流センター

▲夢洲第二物流センター
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