サムコ 【6387・プライム市場】

化合物半導体製造装置のパイオニア
次の柱としてヘルスケア分野にも注力

シリコンの純粋な結晶からではなく、複数の元素で作られる「化合物半導体」が、データセンターや5G通信、電気自動車用として注目されている。サムコは40年以上前から化合物半導体の製造装置を開発・販売してきた。20年7月期は売上高58億6900万円(前期比18. 9%増)と過去最高を更新。株価は1月に上場来高値の4260円を記録した。
サムコ-川邊 史代

川邊 史代(かわべ つかさ)

社長兼COO

1974年生まれ、三重県出身。99年京都大学大学院卒業。中部電力を経て、2008年サムコ入社、16年取締役副社長、18年代表取締役社長兼COO(現任)。

半導体に成膜・加工・洗浄を施す
多様な製品に対応する技術力が強み

サムコは、窒化ガリウムや炭化ケイ素など「化合物半導体」の製造装置の草分け的存在だ。化合物半導体はシリコンとくらべ加工が難しいが、高速で動作する、高い耐熱性、低消費電力、発光するなどさまざまな優れた特性を持っている。その特性を活かし、スマートフォンに搭載される高周波回路や顔認証に用いられる面発光レーザー、次世代のディスプレイとして注目されるマイクロLED、通信機器や車載用として需要が高まるパワー半導体に使われるなど、化合物半導体の活躍の場が広がっている。

同社は「CVD装置」「エッチング装置」「洗浄装置」の3種類の製造装置を製造・販売する。年間生産台数は150〜160台。装置の平均価格は1台当たり3千〜4千万円だが、中には1億円を超えるものもある。

CVD装置は、半導体表面に10〜千ナノメートル(1ナノメートルは百万分の1ミリ)ほどの薄い膜を形成するもの。半導体を水やほこりから守ったり、半導体回路に不可欠な電気を通さない絶縁膜を作ったりすることができる。化合物半導体の需要増により、20年7月期の売上高は124.3%増(前期比)と急拡大している。

売上の約6割を占めるエッチング装置は、半導体ウエハ上に施された薄い膜に微細な溝を彫るもの。同社は薬液を使用するウェットエッチングではなく、プラズマ加工による「ドライエッチング」用の装置を製造している。プラズマ加工とは、宇宙空間のような真空下で気体を励起状態にした(プラズマ化した)ものを用い、材料を微細加工する技術。半導体の小型化と高集積化が進むとともにドライエッチングの需要も拡大しており、20年7月期のエッチング装置売上高は20.3%増(前期比)と伸びている。

洗浄装置は、プラズマ処理によって半導体ウエハ上の微細なゴミや汚れを取り去るもの。売上高比率では約1割と低いが、後述するヘルスケア分野にも技術の新しい展開が可能である。

「化合物半導体にはさまざまな元素の組み合わせがある。製品が多岐にわたる上、それぞれに専門性の高い技術者が必要。当社には社員約180名中に開発技術者が60名以上おり、顧客のニーズを汲み取って開発を行っている。技術偏重と言われるかもしれないが、それが当社の大きな強みです」(川邊史社長兼COO)

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