弁護士の登録料が収益源
スマホ向けサービスも好調
同社の2019年3月期の業績は売上高31億3200万円(前期比35・1%増)、経常利益5億1100万円(同1・2%増)の増収増益となった。売上高の約60%を占めるのが弁護士マーケティング支援サービスだ。
同社は2005年から法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」の運営を開始。このサイトには86万件もの法律相談が掲載され、全国の弁護士の検索、問い合わせ、複数の弁護士への費用一括見積りなどができることから、月間1500万人が訪れる人気サイトになっている。1万7000人の弁護士がこのサイトに登録しており、これは全国の弁護士の約40%を占める。
弁護士は法律相談に回答することで、サイトを閲覧している多くのユーザーに名前と専門分野を知らせることができる。また月額2万〜5万円の料金で有料登録すると、料金表を含むプロフィールの詳細表示や、検索結果の上位に名前が表示されるなど、さらに集客アップに繋げるサービスが受けられる。この月額料金収入が同社の事業の根幹だ。有料登録弁護士は4700人を超え、さらに増加を続けている。
「日本では毎年1700万人が何らかの法律トラブルを抱えているが、実際に弁護士に相談するのはそのうち約20%だけ。この状況をみて、ネットを使って弁護士を身近な存在にしたいと考えました」(内田陽介社長)
同サイトはユーザー向けに月額300円の有料サービスも展開している。こちらは携帯端末ですべての法律相談に対する弁護士の回答が閲覧できるもの。プライバシーが確保しやすい携帯端末からの訪問が増えており、有料サービス登録の会員数は19万人を超えている。
弁護士の採用や事務をサポート
税理士専門サイトも売上を拡大
同社は「弁護士ドットコム」のサイトを、企業内弁護士なども含む弁護士に向けたプラットフォームに育てたいと考えている。そこで弁護士に特化した採用・転職支援やキャリアコンサルティングサービスを展開している。また弁護士事務所向けにホームページ作成や電話代行などのサービスを始めている。今後は案件管理ツールをリリースする予定で、これによって事務作業の負担を軽減し、弁護士がより多くの相談者に対応できるようにする。
さらに同社は「弁護士ドットコム」の税理士版である「税理士ドットコム」も展開している。これは日本最大級の税務相談サイトで、月間で約213万人が訪問している。無料登録した税理士が相談に回答するシステムは同じだが、こちらはサイト側がユーザーに税理士を紹介し、税理士から入る成約手数料が収入源だ。
「税理士会員は約4000名でさらに増えつつあり、売上は順調に拡大しています。今後は個人の相続、中小企業のM&Aや事業承継がもっと増えていくでしょう。その時相談するのは、やはり税理士ですから、非常に有望な分野だと考えています」(同氏)
電子契約をもう一つの柱に
投資家の高い期待に応える
同社がいま最も注力しているのが、クラウド型電子契約サービスの「クラウドサイン」だ。電子契約を採用している企業でのクラウドサインの業界シェアは80%と高く、契約件数は第2四半期単独で17万件を超えるなど、同社の売上増加を牽引する存在となっている。料金体系は「スタンダード」が月額1万円、より高いセキュリティを保証する「ビジネス」が10万円で、契約送信1件につき200円。「紙の契約書だとやりとりを含めて約2週間かかるものが、クラウドサインは数分で終わります。コスト面でも、紙の契約書は人件費、郵送費などで1件あたり700円。しかしクラウドサインなら1件200円。一度使うと圧倒的な利便性で紙の契約書に戻れない」(同氏)
電子契約サービスの潜在的な市場規模は3000億〜4000億円とも言われ、世界トップのドキュサインを含む様々な企業が日本市場に参入している。同社は弁護士・税理士サイト運営の信用をバックに導入企業を増やすとともに、TVCMでの宣伝や人材採用などで積極的にクラウドサインに投資していく。
「今後はクラウドサインの事業を拡大しながら、弁護士ドットコムのビジネスモデルを進化させていく。投資家の皆様から頂いている高い期待を早く実現するには、中長期的に継続して成長させることが重要だと思っています」(同氏)
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