シェア優先から付加価値経営で『利益回復』
2005年11月にトップに就任した内藤弘康社長は、翌2006年度からの3か年の中期経営計画『Vシフトプラン』を発表。シェア獲得、数字優先で疲弊していた組織を変革。量から質へ、高付加価値の商品開発などへ舵を切り、価格競争からの脱却を実現させた。
─2005年の社長就任から、まず取り組んだのは「利益重視」ですね。
大変ショックだった経験がありまして。量販店でうちのビルトインコンロが売られていたのですが、段ボール箱に入れられ積み重ねられ、箱はビリビリ。それが1万円いかない、9000いくらの「大安売り」で販売されていたのを見かけたのですね。
─ビルトインコンロで?当時でも10万円はするでしょう。
材料費だけでも2万、3万円かかっています。それが1万円弱かと茫然としました。私は経営企画部にいたので、コンロの台数はすごく出ていたけれど、利益的には大赤字だとわかっていました。そこでトップになった時、社員に「安売りは止めよう。まずはやってみよう」と言いました。
─売ってシェアを獲っていた営業マンからの抵抗もあったのではないですか。
そこは運がよかったといいますか…社長に就任したその冬が、寒波と大雪になったのです。そうなると給湯器の熱交換器がダメになったりして、台数が出ていくのです。また
暖房のファンヒーターも売れました。11月に「安売りはするな!」とみんなに号令をかけ、どうなることかと思っていたら12月からどんどん寒くなり、安売りしなくても売れるようになりました。
─そこでもう一つの重点施策「ビジネス変革」も進められた。
台数優先ではなく「魅力ある商品を開発して、それを大事に売っていこう」ということを徹底させました。というのも、当時は「他社からこんな商品が出たから、早く出せ」と会議をやるたびに量産日程を前倒し、開発部門は疲弊していました。急がせるので不完全なまま商品が出て、品質に問題も起きていていました。それを営業が「開発が悪いんだから、修理に行け」と言うのですね。開発をやっているのか、修理をやっているのかわからないと逼迫した状態になっていました。
─悪循環ですね。
そこで営業に「1年間だけ、我慢してくれ。体制を正常に戻してきちっとやらないダメだから」と言い、安売り競争をおさめさせました。
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