イボキン 【5699・スタンダード市場】

解体・環境・金属の3本柱で業績伸ばす
資源再循環させる総合リサイクル企業

イボキンは、建築物やプラント・機械設備の解体から、スクラップの加工・販売、産業廃棄物の最終処分までを手掛ける、廃棄物専門の総合リサイクル企業だ。業績は、2020年12月期までで経常利益5期連続増収と好調を維持。21年12月期も、大型工事の完工やスクラップ相場の高騰といった市場環境が追い風となり、過去最高を更新する見込みだ。群雄割拠の静脈産業で、近畿・中国を地盤として、解体事業を成長エンジンに勝負を挑んでいる。
イボキン-高橋 克実

高橋 克実(たかはし かつみ)

社長

1969年5月6日生まれ。93年津田鋼材(現三井物産スチール)入社。95年ヤタカ入社。98年イボキン入社。2002年常務取締役、03年専務取締役を経て、07年同社代表取締役社長就任(現任)。

経常利益は5期連続増収
今期も最高益更新見込み

イボキンの2020年12月期の売上高は54億5300万円、経常利益は4億800万円で、5期連続増収を達成した。

報告セグメントは、①解体事業、②環境事業、③金属事業の3つだ。

①の解体事業は、同社の中で成長エンジンとしての位置付けで、全売上の25%を占める。建築構造物やプラント、機械設備の解体・撤去工事を請け負うほか、解体現場で発生する産業廃棄物のうち金属類は、同社の金属加工工場へ運搬、金属再生資源としてリサイクルを行う。

②の環境事業とは、産業廃棄物処理事業のこと。全売上の25%を占めるこの事業では、廃棄物や使用済み機械類の中間処理を引き受けることで、廃棄物排出業者から廃棄物処理受託料を受領。また、それら産業廃棄物を再生資源として出荷・販売している。

続いて③の金属事業は、安定基盤の位置付けで、全売上のうちの49%と最も多い。金属スクラップを仕入れ、自社工場で金属系再生資源に加工、製鋼メーカーなどに対して出荷・販売を行っている。

「当社が手掛ける解体、環境、金属という3つの事業は密接に関連し合っている業界ですから、非常にシナジー効果が高い。3つ全てを手掛ける点が、当社の強みかと思います」(高橋克実社長)

同業7社と包括業務提携締結
全国での解体工事受注可能に

同社は1984年、揖保川金属の名で先代社長が創業した。前述の金属事業を祖業とし、90年頃からは産業廃棄物処理事業(環境事業)を開始する。その後、先々代が船舶の解体業を営んでいたルーツに立ち返るようにして、解体事業にも進出した。

産業廃棄物処理に関しては、市場環境に特色がある。日本では自治体ごと、また取扱物ごとに申請許可が必要で、法的な規制もあるため、参入障壁が高く、商圏拡大も容易ではない。たとえば米国では、ウェイスト・マネジメント社やリパブリック・サービシズ社など、売上高が兆円を超える巨大企業の寡占状態にあるが、日本では、12万社ある産廃業者の多くは地元密着型の中小規模の企業だ。しかしここへきて、日本でも解体、リサイクル業を含めたいわゆる「静脈産業」業界全体で、再編の動きがみられる。

イボキンの場合も、近年、他社との連携を一層高め、リサイクルのみならずリユースの循環を創造する方向へ動いている。連携の核となるのは、2015年、リバーHDの呼びかけにより、廃棄物処理・リサイクル会社7社で締結した、アライアンスグループ「ROSE」だ。7社は日本各地に処理工場を有しており、イボキンの解体事業が全国展開する上での足がかりとしての意味がある。

「欧米に比べ日本の(リサイクル関連業者の)事業規模は小さく、海外勢にやられてしまうのでは、という危機感があり、志を同じくする人たちと業務提携を組みました。この連携で、スクラップなどの協業先での処理が可能になり、日本全国どこでも解体を請け負えるようになりました」(同氏)

工場の処理能力引き上げへ
受入量増やし需要増に対応

21年12月期の通期業績予想は、前期比55・4%増の売上高84億7500万円、経常利益は同73・7%増の7億1000万円と、大幅増となる見通しだ。今後の事業展開に関して同社では、「総合リサイクル企業としての競争力強化」を成長戦略に掲げ、⑴集荷力・処理能力の強化、⑵ソリューションビジネスの展開、⑶信頼性の確立、という3点を推進する。

まず⑴集荷力・処理能力の強化に関しては、設備撤去を含む解体需要の伸びにも対応できるよう、工場の処理能力の引き上げを検討。具体的な数値目標として、環境事業では現在の受入トン数年間30千トンを5年後に同約50千トンへ、金属事業では現在の同60千トンから5年後に同120千トンへ、それぞれ目指す。また、業容の拡大のため、新たなヤードの確保や、重機などの機械設備への投資も併せて検討する。

続く⑵ソリューションビジネスの展開としては、解体、環境、金属の3つの事業を有していることから、解体や設備撤去から、スクラップの買取り、産業廃棄物の処理に至る、静脈産業のバリューチェーンにおいての様々なニーズに対して、ソリューションを提供できる体制を整えている。企業間のネットワークを生かし、設備のリユースのため、撤去設備を海外に搬送するサービスに関与した事例もある。

「地球環境にとって最も良いのは、(解体した物をリサイクルして)原料化するのではなく、そのままの形でリユースし、今ある物を長く使っていくことだと思います。しかし、延命化したとしても必ずいつかはその役割を終え、いつかは解体し、リサイクルしなければならない。その時にいかに高品位の資源にするかが重要だと考えます」(同氏)


▲解体工事現場で発生する瓦礫などは、自社工場で加工し再生資源として蘇らせることもできる

社員教育や育成にも注力
大型案件受注へ技術者増強

⑶の信頼性の確立については、人材育成・社員教育のさらなる強化が挙げられる。たとえば解体事業で元請となるには有資格者が不可欠といった事情もあるため、今後は大型工事の増加を目指し技術者の育成に注力する方針だという。

「当社では人材育成・社員教育に非常に多くのエネルギーを注いでいます。技術面の勉強もそうですが、ベースは人としての心の勉強を大事にしています。良い社員がたくさんいてくれる会社にしたいと考え、10年程前から毎日の朝礼で、手帳の経営理念を全員で読み上げるなどしています」(同氏)

同社では社風醸成のための各種行事なども奏功、離職率は7・4%を保っている。

「朝礼でも言っていますが、当社は日本を代表する総合リサイクル企業を目指しています。規模はまだ小さいですけれども、いずれは売上高1000億円を超え、必ずプライム市場に移れるような企業にしたいと思います」(同氏)


▲工場の外観。処理能力の引き上げを検討している

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