国内最大252万会員のネット印刷プラットフォームを運営 ラクスル 【4384・プライム市場】

複数のプラットフォームが収益化フェーズに
事業拡大と利益創出の「クオリティグロース」に移行

テレビで『ラクスル』のCMを目にした人は多いだろう。同社は2009年に創業し、13年にBtoB向けの印刷のシェアリングプラットフォームの提供を開始。翌14年からはスタートアップながら大量のCM放送で認知度を上げ、ネット印刷でシェアトップの会員数を獲得している。現在は成功ノウハウを事業化した広告の『ノバセル』、物流の『ハコベル』、コーポレートITの『ジョーシス』など、複数のBtoBプラットフォームを展開。多領域からの収益化のフェーズに入り、事業規模拡大と利益創出の両立を目指している。
ラクスル-永見 世央

永見 世央(ながみ よう)

社長

1980年8月生まれ。2004年3月、慶應義塾大学総合政策学部卒業、4月、みずほ証券入社。06年8月、カーライル・ジャパン・エルエルシー入社後、09年7月、米国ペンシルバニア大学ウォートンスクールに留学、MBA取得。ディー・エヌ・エーを経て14年4月、ラクスルに入社。14年10月、取締役CFOに就任。23年8月より代表取締役社長CEOを務める(現任)。

旧態依然の印刷業を変革
顧客・印刷会社ともにメリット

ラクスルは、全国の提携印刷会社が保有する印刷機の非稼働時間を有効活用するBtoB向けシェアリングプラットフォームを開発。テレビCMや広告を見た顧客の注文を受け、機械の空き状況や印刷内容に応じて、提携する印刷会社に仕事を振り分ける印刷サービスを提供している。紙1枚からの小ロットで、24時間注文が可能、全国送料無料。対象はチラシやポスター、のぼり印刷のほか、販促などで活用できるTシャツやトートバッグ、モバイルバッテリーなども扱っている。

印刷業は需要に波があり、年間の平均稼働率は50~60%と言われる。遊休機械を持つ会社は、多少価格を下げても仕事を受けたい希望はあるが、業界は大手からの多重下請け構造で、印刷工場と顧客の直接のマッチングができていなかった。

同社は、全国のサプライヤー約300社と提携。需給のマッチングをするだけでなく、生産現場のオペレーション改善などにもコミットすることで、パートナー企業は安定受注と生産性向上を実現。その収益は設備投資等に回され、生産キャパシティが拡大されることで、同社の売り上げ拡大につながっているという。

一方ユーザー側は、テレビCMを中心とした圧倒的なマーケティング戦略により、右肩上がりで増加している。累計252万会員数はネット印刷でトップを誇り、市場のけん引役となっている。
「印刷会社で余っている非稼働の機械を使わせていただいているので価格が安く、かつそれをインターネット上で簡単に発注出来ます。ユーザーにとっては価格や使いやすさ、ユーザビリティーで選ばれ、またサプライヤーの方からは余っている稼働を埋められる、win─winのシチュエーションで選ばれていると思います」(永見世央社長)

ユーザーの内訳は6割が個人、法人が4割で中小企業が多くを占める。その中で大手企業における印刷物の制作は、従来、拠点ごとに発注先・方法が異なるために管理が行き届かなかったり、業務全体がブラックボックスとなっていた。そこで2021年10月、承認ワークフローやデザインの一元管理等の機能を持った大企業向けの印刷物・販促物発注一元管理サービス『ラクスル エンタープライズ』を開始。大手企業は「明日までに大量の名刺が欲しい」といった短納期の受注が多く、結果的に価格も高く設定され、利益率も高い。現在ラクスル事業の売上の2~3%を占める大企業向けサービスを、今後10%まで上げていくとしている。

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