ヒューリック 【3003・プライム市場】

建替を契機に空室リスク分散建物のポートフォリオ見直し

不動産業界で時価総額4位のヒューリックは、オフィスを中心とした約260棟の賃貸物件を有する。旧富士銀行(現みずほ銀行)が所有していたビルの管理会社から始まった同社だが、所有物件の多くが経年化し、建て替えの時期を迎えている。奇しくも働き方改革・コロナ禍によってオフィスの在り方が見直される中、同社は人口動態に合わせ、物販、オフィス、ホテルなどを1カ所に集約させる複合型ビルへの転換を図っている。さらに多角化を目指し、次世代アセットに取り組む。
ヒューリック-前田 隆也

前田 隆也(まえだ たかや)

社長

1962年3月、大阪府生まれ。84年大成建設入社。2007年ヒューリック入社、不動産開発第二部次長。09年取締役執行役員不動産開発第二部長。13年取締役執行役員不動産統括部長などを経て、14年4月取締役常務執行役員不動産統括部長に就任。15年1月取締役常務執行役員開発事業第一部長。20年4月取締役専務執行役員、21年4月代表取締役副社長。22年3月代表取締役社長に就任(現任)。

銀座エリアに高級旅館
容積率緩和を利用

同社が計画している、東京・銀座の建替計画が話題になっている。みずほ銀行銀座中央支店が入居する「ヒューリック銀座ビル」跡地に建設する新ビル内に、同エリアでは初めてとなる高級旅館を開業させるからだ。

2025年に竣工予定の同ビルは、敷地面積1020㎡、12階建て。低層階には物販店舗、中層階にオフィス、高層の6フロアーには独自ブランドの「ふふ」を新規開業するという。銀座の一部地区では、一定規模の客室を備え、ホテル関連施設を容積率50%(敷地面積の2分の1)以上設ける場合に、100~300%の容積緩和となる。

同社は、他エリアでもこのような都市計画の緩和策を活用する方針だ。

「ホテルを積極的に開業するというわけではなく、再開発案件に応じて、該当地域の容積率の緩和を活用していく上で必要であればホテルを検討してみたい」(前田隆也社長)

同社は37棟のビルを所有する、銀座地区で最大の地権者。1974年に竣工した「ヒューリック銀座ビル」を筆頭に、地価が安い頃に建てたビルは築30年以上経過し、順次建替えを計画している。

「取得時と現在の地価との差額を賃料に転嫁できる他、容積率の高い建物に建て替えることで、利益率の高い物件にできます」(同氏)

東京・銀座の他にも、福岡・天神、札幌、大阪・心斎橋といった地方都市でも再開発案件に着工している。低層階に商業施設、中層階にオフィスといった一棟に複合的な用途ができる「ハイブリッド型総合ビル」へと建て替えていく方針だ。

「すでに着工している『(仮称)ヒューリック福岡ビル建替計画』は一つのモデルケースですが、複数業種の施設を入居させることで賃料が増加し、空室リスクも軽減します」(同氏)

同社は所有物件260件の約30%にあたる78件と新たに取得する築古物件を合わせ、計100件超を29年までに開発・建替えしていく予定だ。

「21年11月に、公募と第三者割当による約980億円の資本調達を実施済みです。うち621億円を開発や建替えの資金にあてます。25年までに約1兆2000億円程度の新規投資(物件取得+開発・建替)をする予定です。建替え物件が竣工すれば、賃料収益が加速する見込みです」(同氏)

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