奥村組 【1833・プライム市場】

地震の激しい揺れを抑える「免震」のパイオニア
中計を推進し2024年度売上高2800億円へ

関西地盤の中堅ゼネコン、奥村組は、創業115年の歴史を持つ老舗企業だ。「堅実経営」と「誠実施工」を信条に、地震に強い免震技術やトンネル施工のシールド工法など、独自の技術を開発し高い評価を受けている。同社は株主還元に積極的に取り組む。前期(2021年度)の連結配当性向は51.5%であり、中期経営計画(2022~2024年度)の計画期間中は連結配当性向70%以上を基本方針としている。
奥村組-奥村 太加典

奥村 太加典(おくむら たかのり)

社長

1962年3月15日生まれ、奈良県出身。中央大学理工学部卒。1986年4月奥村組に入社。1994年取締役、2001年4月常務取締役に就任。2001年12月代表取締役社長に就任(現任)。

「堅実経営」「誠実施工」を
信条に土木、建築事業等展開

奥村組の歴史は1907年、創業者の奥村太平氏が土木建築請負業を創業したことに始まる。「堅実経営」「誠実施工」を信条に土木事業、建築事業などを展開。事業を通じて社会に貢献することを使命とし、大阪のシンボル「二代目通天閣」の建設(1956年竣工)や、阪神・淡路大震災(1995年1月)で壊滅的な被害を受けたJR六甲道駅の早期復旧などを始めとする数多くの社会インフラの構築に携わってきた。

同社の強みの1つは、100年超の歴史で培った独自の技術力だ。土木分野においてはトンネル工事を得意とし、「シールドマシン」と呼ばれる筒状のトンネル掘削機で安全に地中を掘り進める「シールド工法」に強みを持つ。連結子会社の奥村機械製作がシールド機を設計・製作。機械と施工のノウハウを共有できる強みがあり、国内外の工事で同社のシールド機が活用されている。

「シールド工法そのものは欧州で開発された工法であり、当社は1965年に国内初の泥水式シールド工法の『OCMS工法』(※)を開発しました。泥水を地上の水槽からポンプを使って地中にある掘削機の先端まで送り、その泥水の圧力で前面の土砂の崩壊を防ぎながら掘り進めていく工法で、地盤の硬さや断面の径にもよりますが一日に約20メートル進むことができます。この工法の施工延長では当社はトップクラスです」(奥村太加典社長)

建築分野では、「免震のパイオニア」として知られる。免震技術は地震対策工法の1つであり、地盤と建物の間にクッションとなる免震装置を組み込み、地震の激しい揺れを抑える技術だ。

同社の技術研究所管理棟(茨城県つくば市)は1986年に竣工した日本初の実用免震ビルであり、同社の免震技術は共同住宅や医療施設、商業施設、文化財や美術品の展示ケースなどに採用されている。

「当社の東京本社ビルは、既存建物を免震化する免震レトロフィットの工事を行っています。建物の1階の柱頭部を切断して躯体をジャッキで支え、切り出した柱を引き抜いて、そこに免震装置を設置しました。2011年の東日本大震災の時、私はこのビルに居ましたが、わずかな揺れを感じる程度でした。万が一の大地震の発生時に自社の被害を最小限にとどめ、復旧支援に行くことが使命であると考えています」(同氏)

(※)OCMS工法:Okumura Circulation Mechanical Shield

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